2016年10月29日土曜日

大政党の党運営と野党共闘

個体はそれ一つしかないものだと思います。全く同じ成分で作られた、全く同じ性質をもっている製品も、全く同じ遺伝子をもつクローン生物も、個体は世界で唯一の存在です。
 人間もそうだと思います。仮に100%同じ遺伝子をもっている二人の人間がいたとしても、それぞれ一人一人が個体であり、世界で唯一の存在だと思います。

すべての人間の考え方や感じ方などの人間性は、その人だけのものだと思います。それに人間関係や利害関係などの社会性も、ひとりひとり異なるものだと思います。
考え方や感じ方、個性や社会性が似ている人はいると思います。しかしそれらがまったく同じことは、この世界ではありえないと思います。

国会議員も人間ですから、持論や主張がまったく同じ人はいないはずだと思います。ただ考え方が近しい人は少なからずいると思います。そういう人たちがまとまっているのが政党だと思います。
民主主義は多数派の意見を採用することが原則だと思います。そうなると国会議員が自分の考えを国政に反映させるには、同じ考えを持つ者とまとまることが必要だと思います。

ただそれにしても、政党に属する議員も一人一人の持論があるでしょうから、全員がすべての政策において同じ考え方であることはないと思います。
当然ですが、所属する人数が多いほど、主義主張も多くなり、相対する意見を持つ者が多くなると思います。

個人的にはそれは民主的な政党政治の原則から離れていると思います。出来るだけ思想や主義主張が近い者同士で政党は構成されることが、民主主義の根本の理念に沿っていると思うのです。
そうなると必然的に政党の人数は多くならないと思います。それでいて政党の数が多くなりやすいと思います。議会は多党制になると思います。
 今までは二大政党制や実質的与党固定制が適していたのかもしれません。しかしこれからの時代の民主的な国家の議会は、多党制の議会がより適していると考えています。
しかし現状の議会のあり方や選挙制度では、多党制の議会にはなりにくいと思います。選挙制度を含めた国会を大きく改革しなければならないと思います。
それは容易なことではなく、また現状を大きく変えるとなると混乱やあらゆる形での争いが避けられないと思います。
 
そう考えると選挙制度や国会の改革を模索しつつ、当面は現状の議会で国政を進めることが現実的だと考えます。
そうなると、政党内であれ、政党間であれ、政策の不一致を容認しなければならないと思います。
 多数の議席を持つ政党が与党になるのですから、必然的に与党は所属議員が多いということになると思います。所属議員が多いということは、議員間で意見の相違も多いということになると思います。
 実際、現在の巨大与党は、ずっと前から相対する政策を掲げている議員が混在しているように見えます。

 前途したようにそれは民主的な議会の原則には則していない気がします。しかしそれが常態となり、[多様な意見がある政党]として国民が受け入れてきた感があります。
“派閥”など、政党の中で集団をつくるのは、“議会における多数派の二重構造”といえるかもしれません。
 時に派閥間、議員間で対立がおき、それが国政の混乱や停滞を引き起こしたこともあったと思います。
 現在の巨大与党はそういうことが起こりにくい状況にあるように感じます。巨大であるということは“与党であることが安定している”と、議員も国民も感じているように思います。
 その安定を壊すことを避けたい心理が、議員にも国民にもあるように感じます。
 巨大与党所属議員のなかには、政党が進める政策に反対する者や、党運営に批判的な意見をもっている者もいるだろうと思います。
 しかし“これだけ与党が安定しているのだから、今党内で波風を立てることは自分にとっても得策ではない”というような意識があるように感じます。
 
 また、与党が巨大で安定していると“与党の国会議員である”ということを重要視する所属議員も少なからずいるような気がします。
 それに現在の巨大与党は、ずっと前から異なる意見を持つ議員を抱えているため、それを党運営の大きな支障にしないノウハウのようなものが蓄積されているのだろうと思います。
ただそれは火種を抱えていることもでもあり、過去にはそれが燃え上がったことがあるのだと思います。

 数年前に選挙で政権をとった政党は、意見や主義主張の相違が、政党内での政争の道具にされたのだと思います。その政争によって国政は大きく混乱し停滞したと思います。しかもどれだけ国民が批判しても政争を収められなかったため、みなが愛想をつかしたのだと思います。
 与党経験がないが故かもしれませんが、一国の政治を担う政党としてはあまりにも情けなかったと思います。

それにしても野党が政党を大きくするには、異なる政策を掲げる議員をとりこまなければならないと思います。つまり“寄せ集め”になることは必然ということです。
実際、与党はそうだと思います。ただ野党には、巨大与党のように主義主張の相違を受け入れる雰囲気もノウハウもないのだと感じます。
だから寄せ集めの政党は党内で争いがおこり、関東と関西の人気者同士が手を組んだ政党は結局分裂するのだと思います。

野党が所属議員を増やすには、議員各々が政党の方針に賛同できることと、そうではないことをはっきりと示し、そのうえで同じ政党に属している理由を明確にすることが求められると思います。
所属議員の間でも政策の違いがあるはずです。政党はそれを認め、党議拘束は極力さけるべきだと思います。仮にそれで与党の法案が通ったとしても、議員ひとりひとりの考えを尊重することは政党が押し付けるよりも民主的であると思います。

 個人的には高度に政策が一致する議員だけで構成された少数政党が多数ある議会が望ましいと思いますが、現状ではそうはなりにくいとなると野党がもっと力をつけなければならないと思います。
 そのためには、巨大与党のように異なる意見を持つものを取り込んだうえで、安定した党運営をすることが不可欠だと思います。党内で権力争いなどしている場合ではないような気がします。
与党が巨大化しすぎることは、民主主義において芳しいこととはいえないと思うからです。

しかし現状は与党が強すぎることで、政党内、政党間で政争が起こらないため、政治が安定しているようにみえることで、多くの国民が意識せずに巨大与党を受け入れているように感じます。
国民の意識の中には、“国会など所詮議員の身勝手な政争でしかない。それなら与党は強すぎるくらいの方が、政治が安定していていい”というものがあると感じるのです。
長年、政治家の身勝手な争いを見せつけられてきた国民は、強すぎる与党の問題点から目を背けているような気がします。

その状況において野党は、“与党の議席を減らす”。そういう政策を進める必要があると思います。
“現在は与党の力が強すぎる。それを弱めることは野党に共通する重要である”
野党はそう認識してとりくむべきだと思います。
”与党の議席を減らす“すなわち”野党の議席を増やす“それは野党に共通する”重要な政策“といえると思います。

与党の力が強すぎることは、民主的国家では弊害があると思います。それを是正するには野党による選挙協力が不可欠だと思います。
ただ野党も政党によって政策に違いがあると思います。別の政党だから、それは当然のことだと思います。
 ひとつの政党内でも、所属議員全員が、すべての政策において意見が一致することなどあり得ないのですから、政党間となると掲げる政策が違っていて当然、違いがなければおかしいと思います。
 そんななかでも“与党の議席を減らす”ことを最重要政策に位置づけ、それを優先するべきだと思います
 
“与党の議席を減らす”それ以外の政策が野党間で相対していても、与党の力が強すぎる現状ではどのような政策であれ野党が掲げていても実現できる可能性は低いと思います。
 まずは“与党の議席を減らす”ことが、野党において必要なことだと思います。

 そのためには、政党間で一致する政策と、ゆずれない政策と、完全に一致しないものの国会では連携する政策などを明確にすることが必要だと思います。
 政策が違っていることを各政党が認め、国会では政策ごとに連携することを前提とし、そのうえで選挙協力をするべきだと思います。そうしなければ“巨大与党の議席を減らす”ことは難しいと思います。
 ただ現状では、そうしてでも巨大与党の議席を減らすことが、当面の野党の重要政策だと思います。

そしてそれを国民にしっかりと説明し、理解を得ることが今の野党には必要だと思います。
つまり“与党が強すぎることは国にとっていいことではない”ということの理解が得られれば、それは票に直結すると思います。
野党は、与党の力が強すぎることの弊害や、その現状を是正するための野党共闘であることなどを積極的に発信する必要があると思います。現実的な野党共闘の姿勢が報道で取り上げられるなどして話題になると、次の国政選挙それ自体の関心が高まる可能性があると思います。

 そこで俗に言う無党派層が動けば、それは野党に有利に働くと思われます。