2015年11月15日日曜日

パリが狙われた理由

 パリでイスラム国によると見られる多発テロが起きました。百人以上の人命が奪われるという大きな被害が出ているようです。
 一日にしてこれほどの死者を出すような大規模なテロは、世界的にみても稀だと思います。フランスの大統領も「前例がない」と言っていると聞きます。
 今回の同時多発テロに対して、イスラム国がインターネット上で犯行声明を出しているようです。
 これだけの大規模な同時多発テロですので、組織的であることは間違いないと思います。現時点でイスラム国の中枢部の関与の度合いはわかりませんが、ある程度の人数のテロリストと、テロリストの協力者が動いたものと思われます。

 フランスは昨年からイラクでイスラム国を対象とした空爆を実施していたと思います。
 それが数か月前に、シリア国内でも戦闘機によるイスラム国への攻撃を始めました。
 イスラム国から見れば、フランスは“敵対行為”を増やしたことになると思います。イスラム国の“敵”は多いと思いますが、そのなかでもフランスは『最近敵性が強まった』と受け止められていたのかもしれません。
 それは大規模なテロの標的とする理由の一つになり得ると思います。

 またフランスンには移民が多く、イスラム教を信仰する人も少なくないと聞きます。一部の過激な思想を持つ者が破壊的な活動をしているのであって、イスラム教徒が即ちテロリストというわけではないことは承知していますが、社会にイスラム過激派が入り込む土壌があるという見方もあると思います。
 その土壌が、過激派の思想に感化される人を生み出しやすくしているといえると思います。つまりフランス生まれでフランス育ちのイスラム過激派が表れる土壌があるということです。
 今回のテロでも、そういうテロリストが何かしら関わっていると見られます。国内の協力者なしには、これほど大規模なテロを行うことはないと思われます。
移民が多くイスラム教を信仰する人が多いということが、テロが起きる要因の一つではあると思います。
 ただし、これは今回のテロの状況分析の一つであり、移民やイスラム教徒を批判するのではありません。またここでは、移民の是非について論じているのではありません。

 それと今年一月に起きたシャルリエブド社を襲撃したテロが起きことも、今回の同時多発テロに心理的な影響を及ぼしていると思います。
 テロの理由として見ると、シャルリエブド社襲撃は、同社がイスラム教で預言者とされるムハンマドの風刺画を掲載したことが、イスラム過激派の怒りを買ったのだと聞きます。
 それにくらべて今回の同時多発テロは、フランス軍による空爆に対する報復という意味合が強いと見られます。
 一民間新聞社の風刺画と、国軍による空爆ですので、怒りが向けられている対象が大きく違っていると思います。
 ただシャルリエブド社襲撃が起きたことで、『パリ中心部でテロが起き、人が死んだ』という既成事実が出来たと感じます
 それが今回のテロを計画される段階で、多少なりとも意識されたかもしれません。また無意識的でありながら、心理に影響した可能性があると思います。
 つまり『シャルリエブド社襲撃テロが起きた』という事実が、今回の同時多発テロの遠因になっている可能性があるということです。

 表現の自由に対する卑劣な行為であり、フランスでは多くの国民がシャルリエブド社を擁護したと思います。ただ“タブーの大きさ”は、人によって感じ方が違うと思います。
シャルリエブド社も、擁護する人たちにも『ムハンマドを描くこと』の“タブーの大きさ”を認識出来ていないような印象を受けます。
しかも風刺画という描き方をしたとなると、やはりあまりにも配慮に欠け、いくら何でも思慮が浅かったのではないかと感じます。
そういう意味でシャルリエブド社の責任は、多くのフランス国民が思っている以上に重いような気がします。

また最近フランスを含めた欧州では、アサド政権の継続を容認する意見が強まっているようです。大量の難民が押し寄せ、対処できる規模を超えていることで、『とにかく内戦を終わらせてくれ』『内戦を終わらせるには、アサド政権を存続させるしかない。アサドを倒しても、その後に統治することが出来る政治勢力がない』という考え方に基づいているのだと思います。
 ロシアはかねてからアサド大統領の存続を支持してきたと思います。少し前に内戦終結後の退陣はやむなしという趣旨の発言を、プーチン大統領がしているようですが、それは欧州の多くの国にとっては受け入れやすい方向性だと思います。
 あくまでも終戦のためであり、その後に退陣するという方向性とはいえ、ここでアサド政権が国際社会から認められるのは、反体制組織にもイスラム国にも状況を不利にさせる可能性が高いと思います。

 そこでアサド大統領を認める意見が高まってきた欧州に対して、怒りの感情を掻き立てられ、テロを企てる理由の一つになったように見えます。