2016年5月4日水曜日

トランプ大統領

アメリカ合衆国の大統領は強い権限を有していると聞きます。世界一の大国のリーダーが強い権限を持っているとなると、“誰がその任に着くか”ということはアメリカだけでなく世界的にみてもとても重要なことだと思います。

過去を振り返ってみても、アメリカの大統領は何人も世界の歴史に名前が刻まれていると感じます。
自国以外の国の、過去のリーダーの名前を上げようとしても、アメリカ以外の国のリーダーの名はそれほど多くは思い出せません。
ソ連やロシア、中国など、何人はすぐに名前が出ますが、西欧の国のリーダーとなると、現役だったころは知っていた名前も、退いた後はなかなか思い出せないことが多いのです。

 その点、アメリカの大統領は何人かの名前が思い出せるのです。それは学校の歴史や社会の授業で習っていることや、情報番組、歴史を扱ったテレビ番組などで見聞きする機会が多いなどのことから、記憶や印象に残っているのだと思います。

 これらのことからも、アメリカ大統領は世界的に存在感があり、その選挙は世界中が関心をよせているように見えます。
 数か月前から、アメリカ大統領選挙に関する報道を見聞きする機会が相当に増えた感があります。その要因として最も大きいのは、今回の選挙には、まさに“台風の目”といえる存在がいることだと感じます。
 ドナルド・トランプ氏です。過激な発言内容と、それを発する態度などが、候補者の中でも際立って目立っているように思います。
 極端で過激な主張は、熱狂的な支持者を集めるとともに、反対意見を持つ者たちも少なくないようです。そして双方が強硬的になっていると聞きます。
 支持者も反対派もデモを行い、それが暴力沙汰になることもしばしば起きているようです。

トランプ氏はまだ政策をほとんど述べていないと感じます。イメージというか方向性を発信しているということです。
 ただイスラム教徒の入国を禁止、あるいは制限するとか、メキシコ国境に壁をつくってその費用を負担させるということは、“やること”を明確に言っていると思います。
 しかしそれをどうやって実現させるのか、実現させるには大統領として何をするのか、そのようなことは今のところ発言していないようです。
 そのため、政治経験がなく政策に対する見識が低い、という趣旨の批判はアメリカ国内外でたびたび発せられていると聞きます。

 ただここにきてトランプ氏の言動が落ち着いてきたという声も聞こえてきます。
 世界一の大国の大統領ですから、ふさわしい立ち居振る舞いがあると思います。それは大統領選では毎回取り上げられていると思います。
 ここまでのトランプ氏の言動は、とてもアメリカ合衆国大統領としてふさわしいものではなかったと思います。
 それはアメリカでも多くの政治家、有識者、マスコミなどが言っているようです。
 そして「トランプ氏はイメージチェンジを図ろうとしている」という見方もあるようです。
 実際トランプ氏は少し前から「大統領になれば、ふさわしくふるまうことはできる」という趣旨の発言をしていると思います。
 つまり選挙期間中は、大統領になるために俗にいう“パフォーマンス”が必要で、晴れて大統領になれば“パフォーマンス”のない言動をするつもりであり、それが出来るのだといいたいのだろうと感じます。

 実際トランプ氏が大統領になればそうなるだろうと思います。というか、そうならざるを得ないように思えます。つまりトランプ氏が大統領になれば、選挙期間中のような言動を目にする機会はだいぶ減ると思います。
 ただもしそうなると、支持が急落する可能性があると思います。
 選挙中の支持が熱狂的であるほど、当選後の冷め方が大きくなるものだと思います。
 熱狂的支持には“大きな期待”が含まれているものだと思います。しかし大きいがゆえに実現することは難しいことも多いと思います。
 今のところトランプ氏の支持者のなかでも、本当にメキシコに費用を負担させて国境に壁を作ることが出来るなどと、本気で考えている人はそう多くないと思います。
 ただトランプ氏が大統領になった後、他国に対する強硬的な姿勢が弱まったとみえると、支持者は急速に離れていく可能性は、決して低くないと思います。
 
オバマ大統領も、選挙中には大きな期待を抱いていた有権者や、熱狂的な支持者が少なくなかったと思います。
それは大きすぎる期待は実現されず、熱狂は必ず冷めるものだと思います。
そのためオバマ大統領のイメージが、実績を過小評価させる傾向があると感じます。
トランプ氏が大統領になった場合、大きすぎる期待による失望と、熱狂の冷め方は、オバマ大統領よりも大きくなることが予想されます。

 しかし現在トランプ氏が発言しているような外交を、大統領に就任した後で実践することも相当に難しいと思います。
 外交に限ったことではありませんが、アメリカ合衆国の政治が議会制民主主義であるからには、いくら大統領の権限が強くても、やりたい放題になんでもできるわけではないと思います。
 大統領の権限を振りかざして好き勝手に政権運営することは、現実では相当に難しいと思います。
 ましてトランプ氏は外交に関して見識が不十分で、政治経験がないのですからなおさらです。

 こうしてみると、クリントン氏の支持は熱狂的という印象がトランプ氏ほど強くないと感じます。
トランプ氏が目立つために、クリントン氏の支持が地味な印象を受け、そのイメージが支持を低くすることもあり得ると思います。
ただクリントン氏の場合、有権者の期待が、現実的ではないほど大きくなる、そのようなことは起こりにくいと思います。
それは当選後、“大きすぎた機体に対する大きな失望”も抱かれにくいということになると思います。
 またクリントン氏の場合、支持者が熱狂的になることはそれほど多くないと思います。
 それは当選後、“熱狂が急速に冷める”ということのなりにくいと思います。
 またクリントン氏は、政治経験は十分にあると思います。
 
 よく言われることですが、やはりクリントン氏の安定感は、このところのアメリカ大統領選でもまれに見るほどだと感じます。
 だからこそ“飽きられている”とか“面白みがない”という見方があるのだと思います。
 ただ“稀に見るほど安定した候補者”が、“飽きられている”とか“面白みがない”という理由で大統領になれないとすれば、これからアメリカ大統領に求められるのは“大

統領としての資質“や”政治家としての能力“ではなく、”個性的なキャラクター“とか”盛り上げる要素“ばかりになってしまいそうな気がします。