2017年6月17日土曜日

安倍一強の理由

「安倍さんの他にいないからな。いろいろと問題もあるけど、今はしかたないよ」
「他にいないと考える理由を具体的に説明してください」
「だって他にいないじゃないか」
「では、首相になり得ると、あなたが考える政治家の名前を上げて、その人ではどうしてだめだと考えるのか、理由を話してください」
「……。と、とにかく他にはいないんだよ! みんなそう言っているじゃないか。マスコミもネットもみんなが言うんだからそうなんだよ!」
 少し前から「他にいない」という言葉を見聞きすることが多いと感じますが、この言葉と「誰がやっても同じさ」は“深く考えていない”、“政局や政治を理解していない”、“政治に関心がない”そういう人が、それを隠していうことが多いと感じます。
本当は良く知らないのに知ったかぶりをして、俗に言う“上から目線”で言っているように見えます。心理の動きは俗に言う“中二病”に似ているとところがあるような気がします。

“安倍一強”という言い回しを見聞きするようになって久しいと感じます。“もっと国民から強く批判されてもよさそうなものだが”と感じるような事柄が表ざたになっても、現政権の支持率はあまり下がらない、そんな傾向がずっと続いているような気がします。
 その理由には、“大衆の右翼志向の強まり”や“日本国民が政治に対して安定を求めている”などがあげられると思います。

“大衆の右翼思考の強まり”は世界的な傾向だと感じます。その要因として挙げられるのは、は社会全体が複雑化し、不安定化していることだと思います。
 国際社会も各国の国内情勢も、利害関係や対立構造が非常に複雑になっていると感じます。それは解決が見いだせない状況といえると思います。そして世界中の多くの国民がそんな状況を見聞きし、感じ取っているとように思います。それは漠とした不安にもつながっていると思います。
 そんな複雑化し不安定化している社会では、自己の生命や財産を守りたいという心理が強まることがあると思います。それは自意識、自己愛、の強まりに通じることがあると思います。
そして、自意識を守るために、自分と対立する立場にある他者に対する攻撃性を強めることがあると思います。
また自意識と自己愛の強まりや、対立する他者に対する攻撃性の高まりはインターネットの普及によるところが大きいような気がします。インターネットは多くの他者と浅く接するものだと思います。人間には声や言葉、仕草、表情など、様々なことをコミュニケーションに駆使していると思います。
しかしインターネットでは、その一部しか使うことが出来ず、それが対立や批判、非難、誹謗、中傷に繋がることが多いと思います。
そこで自分を守ろうとする心理が働き、それが自己愛や自己肯定感を強めることに繋がり、他者に対する攻撃性を強めることにつながっているように思います。
また、そのような意識は個人から自分が属する集団に拡大することがあると思います。自国や自分が属する集団に対する帰属意識は、自己に対する意識に共通するものがあると思います。自己愛、自己肯定感、自意識、それらは国に拡大して認識しやすいものだと感じます。
そして自国を第一に考えるようになっている感があります。それは世界的な風潮だと思います。
日本も例外ではなく、かねてから右翼的な言動がめだつ安倍首相に対する支持が強まり、それが持続しているように感じます。
 
また、世界的に社会が複雑化し、不安定化していると、日本国民が感じ取っており、そのため国政に対する安定志向が強まっていると感じます。
国内外に諸問題が山積している状況では、政治の安定が不可欠だと認識しており、政治が不安定化することは結局個々人が不利益を被ることになると感じているのだと思います。
日本は民主党政権時代とその前の自民党政権時代、政治家による国民と国益を無視した身勝手な政争によって非常に不安定だったと思います。
国民の生活と国益は、愚かな政治家による争いの犠牲になったと感じている国民も少なくないと思います。それがつよく国民に印象付けられたのではないかと思います。
また韓国の大統領交代劇や、英国の選挙で与党が過半数を割るなど、他国の政治が不安定になっている様子や、不安定になることが予見される状況を目にして、日本国民はより自国政治の安定を求める心理が高まっているような気がします。

今の日本国民は無意識に安定志向を強め、その意識が“他にいない”という主張の元になっているように見えます。
“下手に交代を求めれば、規模の大小はともかく、政争が起こることは間違いない。そして政治同氏の争いは、政治の混乱と不安定化をもたらすことが予想される”
そこで国民は、わざわざそんなことをしなくても、このままでいいという意識を強めているのだと思います。それを言葉にして表すと「今は安倍さんの他にいない」となるのだと思います。

ただ冒頭に書いたように「他にいない」「誰がやってもおなじ」という言葉は、無関心な人、知ったかぶりをして発することが非常に多いように感じます。
そしてこの言葉を見聞きする機会が増えているということは、大衆のなかに政治に対して無関心な人が増えているということでもあると思います。

それが安倍一強の最大の理由だと思います。