2017年2月18日土曜日

かつてないほど危険な状況にある

逮捕されること、それ自体が練りに練られた計画なのだと思われます。
 大韓航空機の時は、自決を仕損じたことで結果的に北朝鮮の重要な内部情報が韓国に渡ることになったとみられます。
 その轍を踏まないように周到に計画されたのが、金正男の暗殺だったと思います。下手に自決を命じると失敗した場合の面倒なことになりかねないという考えに基づいていると思います。
 実行犯が逮捕されても、北朝鮮が知られたくないことが漏れなければなんの問題もないからです。
それに実行犯が逮捕起訴されたとしても、死刑や終身刑になる可能性は小さいと思います。それならば暗殺の後の逃亡路を確保するより、逮捕させたほうが確実だと踏んだのだと思います。
 逮捕されることが目的ですから衆人環視と、多くの防犯カメラが設置された空港で、事前に練習までして、つまり人目にさらす形で暗殺を行ったものと思われます。
 実行犯が工作員であれ、素人をたぶらかして利用したのであれ、逮捕されても北朝鮮との関係が明らかにならなければ問題ないので、そのようにしてあるのだと思います。つまり実行犯は、漏らしてはならない北朝鮮の情報を知らない者である、ということです。逮捕され尋問されても、北朝鮮当局には痛手はないからです。
 今回、実行犯に求められたのは、暗殺を確実に成功させる能力と、北朝鮮が漏らしたくない情報を持っていないこと、その二つだったと思います。
 一つ目のために、十分な訓練や練習や説明をして暗殺を確実に実行できる状態にしていたと思います。 
 二つ目のために、素人を引きこんだり、工作員の身元を擬装したり、情報を持たない要員を選抜したり、暗殺を実行する訓練をしたりしたのだと思います。
要人暗殺は極めて周到な計画と入念な準備を経て実施されることが多いものだと思います。

 北朝鮮の最高指導者を世襲した金正恩は、それまで政治経験が全くなかったと思われます。それは金正男も同じですが、正恩が後継者に決まったということは、北朝鮮内部で彼を担ぎ上げる人たちがいたものと思われます。
 金正男もそうだったと思いますが、金正日に嫌われたため、ある程度早期に後継者候補から脱落したとみられています。
 金正日が死亡する前に金正恩を後継者と定めたことで、すみやかに権力移行が行われたものの、しばらくは混乱があったように思います。
 国として行うことがちぐはぐな印象があった気がするのです。硬軟両極端なことをやっているように見えました。遊園地を作ったり、ミサイルを発射するときは見世物的にしたり、そこでミサイル発射が失敗したり、といったことがあったと思います。
 それは北朝鮮内部で硬軟両端の勢力争いがあったものと思われます。その争いは、祭り上げた金正恩に取り入って、自分たちの側の主張する方向に最高指導者の意志を誘導することだったと思われます。
 当初、金正恩は強硬派と穏健派のどちらにもつかず、両方の顔を見せていた感があります。それがある時を境に、明確に強硬姿勢を取るようになったように見えます。
 
 一旦は強硬派についたように見えましたが、金正恩は自分自身についたといえるような気がします。
 経験がなく見識もなかったため当初は大人しく担ぎ上げられていたものの、権力を得たことで増長したのだと感じます。
 その増長ぶりはすさまじいものがあり、まさに暴君的であり、周囲では抑制が効かないほどになっていると感じます。
 気に入らない人物を容赦なく葬っているように見えます。

一方、金正男は見識と常識を有していたと思います。後継者候補から脱落したのは三世代世襲に反対するなどしたためだと伝えられていますが、それは見識と常識と的確な国際感覚があるからこそ言えることだと思います。
そして状況を冷静に認識できるからこそ、後継者になる意欲を持っていなかったのだと思います。後継者候補から脱落させられたというより、自ら降りたというほうがいいのかもしれません。
つまり常識と見識をもっていたために、野心を持たなかったということです。また野心を見せることが身を危険にすることを十分に認識していたと思います。
ただ、野心などない、北朝鮮の最高指導者になどなりたいとは思わないと、本人がいくら言っても邪推する者が必ずいることもわかっていたと思います。
そのため殊更、政治とは関係のない行動や、稚拙に見える行動をとっていた感があります。それは聡明さの表れといえるような気がします。
しかし常識と見識を備えた聡明な人物、それは一国のリーダーとしての素養を有した人物であると見る者たちもいたのではないかと思います。

経験も見識もなく、現状を的確に認識する能力が欠けているにも関わらず、ひたすら自意識を高め、強硬性を強めるばかりの金正恩に危機感を抱く者が、北朝鮮国内外にいるはずだと思います。
そんな金正恩体制では国が危ういと考える北朝鮮国内外の者たちが担ぐのは、金正男が最有力候補だったと思います。たとえ金正男本人にその気がなくとも、です。
そうなると、いくら野心がないことや、能力がないことを行動でしてしても、金正恩にとっては、金正男の存在自体が懸念材料になると思います。
今は野心がなくても、いつ気が変わるかもしれませんし、いずれ説得されるかもしれません。
理性的で的確な見識をもつ金正男が、その気になれば金正恩は権力の座から引きずり降ろす、金正恩はそれを恐れていたのだと思います。
今はまだそのような動きが表にでていないため、金正男は特に警戒していなかったとみられます。金正恩からすれば、今のうちに最大の懸念材料を排除しようと考えたのかもしれません。

今の北朝鮮は、金正日が死んだときよりもずっと危うい状況にあるのかもしれません。
それどころか、史上最も危険な体制にあるといえるかもしれません。
経験も見識も常識もなく、自意識過剰の認識不足で、強行一辺倒で統率力がなく、思慮の浅い横暴な素人の若造が一国のリーダーとして権力を強めているからです。
しかも対処するすべが見つけられない状況だと思われます。中国にはそんな金正恩に不快感を持つ者もいれば、そうではない者もいると思われます。

それに素人であるがゆえに、玄人が使う手が通用しないことはよくあることだと思います。