2017年1月15日日曜日

雇用創出と内需拡大

トランプさんは記者会見で、アメリカ国内の雇用創出することを強く主張していたと感じます。
「最も多くの雇用を生み出す大統領になる」
ただそれは、他に実効性のある経済政策を打ち出せないことの表れだったように見えました。
選挙期間中から訴えていたことですので、初会見でも主張するのは当たり前だと思いますし、実際メキシコに新工場を建てる計画をしていた大企業が撤回をしていると聞きます。
トランプさんはすでにそれを自身の“成果”だと認識しているようです。
会見ではその“成果”を誇示するとともに、他の企業にも追従を促していたようです。

トランプさんが今までに打ち出している政策の多くには、具体性と現実性に乏しいことは明らかだと思います。
経済政策に関してもしかりです。そんななか雇用に関してだけは、“大企業によるメキシコ新工場建計画を撤回した”という具体的な現実を示すことが出来たのだと思います。

トランプさんの経済政策への期待からアメリカや日本の株価が上がりました。しかし具体性と現実性に乏しい経済政策であることは多く人が認識していると思います。
 “トランプさんの経済政策に期待する人が多いだろう。だからとりあえず今は買いだ”そういう投資家も少なからずいたはずだと思います。
 そうなると本番はこれからだと思います。トランプさんがこれから本当にどんな政策を打ち出し実行するのか、それが問われると思います。ただ、トランプさんの今までの言動から、どんな政策であっても、これからの株式市場は荒れやすいと思います。

トランプさんは不動産業で財を成したと聞きます。その道は順風満帆ではなかったかもしれません。それでも今のトランプさんが事業における成功者であることは間違いないと思います。そして事業で成功者になるには才覚が必要だと思います。しかし、企業活動で儲けることと、一国の経済とは大きく違っていると思います。
お金を動かす感覚は企業活動も国の経済も共通するかもしれません。しかし国の経済を動かすには、それに関する見識を有していることが不可欠だと思います。
トランプさんの一連の発言からは、彼が国や世界の経済に関して大統領として必要な見識を備えているとは思えないのです。

そうはいうものの、トランプさんが訴える国内雇用の拡充は、どの国でも求められることだと思います。
ところで中国は人件費の高騰などから輸出が頭打ちになっていると聞きます。そこで内需拡大に本腰を入れようとしているようです。
中国には国内消費がまだまだ潜在しており、それを掘り起こすことで経済成長を維持できるという考え方があるのだろうと思います。
『内需拡大が必要だ』それは、かつての日本でもよく耳にした言葉だと思います。輸出が経済を主導する国は、いずれ内需拡大が求められるようになる、それが自然な流れであるような気がします。

アメリカも依然として国内消費は多く、またまだまだ潜在していると思います。そして雇用を創出することで、国内消費は活性化する可能性があると思います。
アメリカ次期大統領が国内雇用の拡充を訴えること、それ自体は至極真っ当なことだと思えます。
しかしトランプさんの場合、一国の経済を見るには視野がせまいと思います。狭い視野ために状況認識が出来ていないように感じます。
視線が狭いため主張が単純になりがちなのだろうと思うのですが、単純な主張は大衆にはわかりやすく、選挙戦では支持者を引きつけたという側面があったのかもしれません。
しかし経済の実態は決して単純ではなく、またトランプさんの主張が通るほど浅くもないと思います。

 日本に目を向けると、やはり雇用の拡充は経済に有効だと思います。日本の場合、雇用創出、拡大が内需の掘り起こしにつながる可能性が高いと思います。
ただ日本の状況はアメリカや中国と違って国内消費は縮小しており、それはこれからも続くものと思われます。しかも加速していくと考えられます。
少子高齢化は消費者の減少に直接的につながるからです。そんななかで給与水準がさがれば、国内消費は確実に冷え込むと思われます。
給与水準が下がらなくても、上がらなければ国内消費は高まらないと思います。人口減少、少子高齢化の社会ですので、個人消費が横ばいならば国内消費は下がることになるからです。

そう考えると日本の場合、内需拡大には給与水準を高めることが不可欠だと思います。それと、いかに人口減少少子高齢化といっても人がいなくなるわけではないのだから内需はあると思います。
そうなるとその内需の掘り起こしが絶対に必要だと思います。日本人が欲しがるものを見つけること、日本人が欲しているサービスを見つけること、それが今の日本経済には非常に重要だと思います。
そしてそれらを日本で作って提供することは、給与水準の押し上げに繋ぎ得ると思います。ものを作ること、サービスを提供すること、それらが増えると雇用が生まれたり給与水準が高まったりする可能性があると思わるからです。
ものであれサービスであれ、多くの日本人が欲しがるほど、その過程で付加価値が生まれやすいと思います。
給与水準が高まることで個人消費が活性化すれば、国内消費も高まると思います。まさに好循環です。
“日本人が欲しがるものを日本で作って日本で売る”

 輸出業を軽視するわけではありませんが、今後は世界の経済が難しくなるばかりだと思われますので、改めて内需に目を向ける必要があるような気がします。