2017年1月15日日曜日

一体いつまで道半ばなの?

「デフレ脱却までまだ道半ばです」
もう何度も耳にしている感があります。それに随分前から耳にしているとも感じます。何度も耳にしているのは、何年間も“道半ば”であることも一因だろうと思います。
考えてみると、あまり長い間“道半ば”では“成果”とは言えないのではないかと思います。“道半ば”で止まってしまい、それ以上に進めないのでは上手く行っていないという見方をされてもしかたないと思います。
あるいは方向性を誤っているという見方もあると思います。
「アベノミクス」を名付けた政策は順調とはいえない、あるいは政策が正しくなかった、といえるかもしれません。
ただどちらも初めから想定されていた気がします。

 少し前から世界には“金融至上主義”という考え方が蔓延している感があります。
世界中で多くの人達と多くの国が、金融経済を重視し、金融経済に頼るようになったようにみえるのです。 
 そうなった要因の一つだと考えられるのは、情報技術の進歩が挙げられると思います。金融に関する作業が効率化し、即時的な対応が可能になったことで、取引が活発になったのではないかと思います。それらは新規参入のハードルを下げることになったのかもしれません。
 そんなことも相まって、金融経済の動きは速まるばかりに見えます。また極端に振られやすい傾向が強くなったと感じます。それは不透明感が強まっているということでもあると思います。即ち予測が難しく、またリスクが大きいということです。

そんな社会では“とにかく金融市場を持ち上げれば、実体経済がついてくる”という発想が通じなくなっていると感じます。その発想自体が古いといえるかもしれません。
バブルの再来を望んでいる、バブル懐古主義者の発想という印象をうけることもあります。数年まで、国民にも、政治家にも、マスコミにも“バブルの再来を望んでいる、バブル懐古主義者”が多かったような気がします。
そのためアベノミクスに対する批判的な論調が強まらなかった感があります。
“金融だけで実体経済を引き上げるには無理があるのではないか”、そういう意識を抱きながらも、“上手くいって日本の景気がよくなって欲しい”、そういう希望的観測が勝っていたように感じます。

また景気は“気”であり、たとえデマでも“良くなる”と多くの人が信じれば、実際に景気が良くなることもあり得ると思います。景気には雰囲気が非常に重要だと思います。
バブル崩壊以降、日本経済が長い間低迷していると感じるのは、そういう雰囲気が蔓延し、払拭できずにいることが、一つの要因だと思えます。
金融市場を活性化することで、景気の雰囲気をよくするということも、アベノミクスの狙いの一つではあると思います。それも必要なことであり、その点について一時、効果があったと感じます。
また「アベノミクス」という呼び名をつけて、首相がみずから積極的にアピールし、マスコミにもその語彙を多く発信させることも、景気の雰囲気をよくする手立ての一つだと思います。
アベノミクスにおいて、最も効果的だったのはこの点かもしれません。

しかしいま本当にこの国の経済発展に必要なの、成長戦略であり、金融経済ではなく、実体経済を強くすることだと思います。
そのために雇用創出と賃金水準の引き上げが求められると思います。それが個人消費を喚起し、個人消費が活性化することで、国内消費が高まり、そこで雇用が生まれ給与水準があがるという好循環が作られる可能性があるからです。
アベノミクスの初代三本の矢の一つに、成長戦略を掲げていましたが、この矢はいかにもおざなりだったと感じます。
バブル懐古者による金融至上主義的政策、それがアベノミクスであり、成長戦略は付録のような扱いだった感があります。
だからいつまで経っても「道半ばです」といわなければならないのだと思います。

 アベノミクスを発表して数年後、今から数年前になってようやく給与水準の引き上げに政府が動き出したように見えます。
 それはいいのですが、そのやり方は企業に給与を上げるように口出しすることであるように見えます。
 それでは効果は限定的になりやすいと思います。むしろ給与を上げられる企業とそうではない企業との格差、都市部と地方との格差が広がることになりかねないと思います。
構造的に給料があがるような政策が求められると思います。

今の世界経済における有効な成長戦略は、あたらしい産業を見つけることが挙げられると思います。つまりこれから発展する産業を世界に先がけて見つけ、それを世界に先だって発展させること、です。
ただしそれは極めて難しいと思います。ことに日本人には。

未来を知ることは誰にも出来ないと思います。
理論や論理的な予想が必ずしも現実になるとは限らないと思います。
これから発展する産業を見つけることは難く、また新しい産業を見つけるにはコストがかかると思います。コストがかかることは、リスクがあるということだと思います。
コストをかけて今後発展するであろうと予測し、その産業を育てるためにあらゆる資材を注ぎ込んだものの、思惑どおりにいかない可能性が常にあるものだと思います。

日本人に見られる心理的な特徴として、リスクがあることには及び腰になりやすいということがあると思います。発想が保守的になりがちで、主体性が弱い傾向がある日本人は、リスクがあると認識した瞬間、守りに入る心理が働く人が多いと感じます。
殊に一度痛い目にあった後には、それが顕著に表れることが多いと感じます。リスクを負って新しい産業を探すことに、バブル崩壊とリーマンショックを経験した今の日本人は及び腰になりがちだと感じます。

それにしても今の日本経済は「道半ば」で立ち止まっていると感じます。
経済が立ち止まって入るということは即ち停滞しているのであり、経済が停滞しているのは、政府の経済対策が効果的ではなく、手詰まり状態だという見方が出来ると思います。

そんな現状を打開するには、大胆な成長戦略が必要なのかもしれません。