2017年1月8日日曜日

第二次安倍政権の外交に対する評価

 日本と韓国の間にはいくつかの問題があると思います。そのすべてが最終的かつ不可逆的に決着することは“あり得ない”といえるほど、相当に難しいと思います。
『最終的かつ不可逆的な決着』とは『この問題はこれっきりにしましょうね』『これで後腐れなしにしましょうね』『これからこの問題は蒸し返すことのないようにしましょうね』、双方がそれを受け入れることだと思います。
 そのような取り決めは、過去に何度か日本と韓国の間で交わされたと思います。しかしいくつかは後に蒸し返されているように見えます。“これっきり”にならなかったということです。
 それは両国の経済状況や国民の意識の変化など、様々な背景があると思います。ただ、むしかえされることで問題は大きくなり、時間が経過することで問題は根深くなっているように見えます。

従軍慰安婦に関する日韓合意は、最終的かつ不可逆的に決着させることだったと思います。
つまり『従軍慰安婦問題はこれっきりにしましょうね』『これで後腐れなしにしましょうね』『これからこの問題は蒸し返すことのないようにしましょうね』そういう取り決めを、日本と韓国が合意したということだと思います。
合意したということは、“国と国”の視線でみれば双方が納得したということになると思います。
 しかし実際は“これっきり”にはならなかったと思います。蒸し返される以前の状況に見えます。“後腐れがある”という以前の話だと思います。
 
 韓国世論では、この合意に賛成する声よりも、破棄するべきだという意見のほうが多いようです。そんななか慰安婦を象徴するという少女像が新たに設置されています。
いくら“国と国”が納得の上で合意したとしても、国民がそれを拒否しているとなると、政治が強引に合意を履行することは難しいと思います。
韓国はそういう風潮が強いのかもしれません。従軍慰安問題や竹島などに関するデモや、セウォル号沈没に関する世論や、このところの朴槿恵大統領の退陣を求めるデモをみると、大衆があまりも感情的になっているように見えることがたびたびあります。

ただ、大衆は国に関わらず本来的に感情に左右されるものかもしれません。感情が大衆を大きくし、また感情が大衆を一方に流していくものかもしれません。俗に言うアラブの春ではそのような傾向が強く現れていたように思います。感情を高ぶらせた大衆を、政治で収めることも相当に難しいと思います。そのため中東諸国では政権が倒れたのだと思います。
それにしても韓国の大衆は、感情的になる傾向が強いような印象を受けます。そして韓国の政府も、感情を高ぶらせた大衆を政治で収めることは相当に難しいと思います。

先日、釜山に従軍慰安婦の象徴とする少女像が設置され、日韓関係が冷却化するだろうという見方が広がっているようです。
韓国内では従軍慰安婦に関する日韓合意を破棄すべきだという世論が大きく、韓国政府が日韓合意を履行することが難しいと思います。
これから、だれが大統領になろうが、どの政党が与党になろうが、韓国政府が日韓合意を履行することは、当分の間出来ないと思います。
今の状況は、合意が履行される前ですので、“蒸し返した”とか“後腐れ”、それ以前だと思います。

ただこうなることは、合意をする前から十分以上に予想できたと思います。これまでの経緯からしても、従軍慰安婦問題が“最終的かつ不可逆的に決着”することなど“あり得ない”のではないか、それはわかりきっていた感があります。
それでも合意したのは、日本が10億円の拠出という合意を履行してれば、合意を履行しない韓国に対して強い立場になれるという思惑があったのかもしれません。
確かに短期的にはそうかもしれません。しかし両国の関係が悪化し、冷却することは避けられないと思います。
しかもこれから年単位の時間がいくらか流れれば、今回の10億年の拠出も韓国国民は知らないことになると思います。そうなるとなかったと同じことであり、韓国の大衆は従軍慰安婦問題で日本を強く批判するだろうと思います。

このように考えると一昨年の従軍慰安婦に関する日韓合意は、後世の判断では“結果的に火種をまいただけだった”となるような気がします。
現在、韓国の国民とメディアは従軍慰安婦問題で日本をさらに強く非難するようになったと感じます。“日韓関係は、この日韓合意によって悪化した”という見方もあると思います。
日本側から長期的にみた外交として、失策となりかねないと思います。
冒頭に書いたように、従軍慰安婦問題に限らず日韓間の問題が最終的かつ不可逆的に決着することは“あり得ない”といえるほど相当に難しいと思います。ならば、たなざらしにしておいたほうがいい、そうするより外にないような気がします。
完全決着などあり得ないのならば、下手に手を出さず放置しておくということです。それでも韓国では日本を批判するでしょうが、それは日韓合意をしても行われると思います。
先日の少女像設置のような事態がおこると、反日感情が高まるだろうと思います。
“後腐れなしの完全決着”、それは端から出来ないであろうと思われます。それなのに無理やり、最終的かつ不可逆的に決着をつけようとしたため、関係が悪化したように見えるのです。それならば、問題は放置して国家間の連携が必要な事柄は、現場サイドで場合によっては非公式に行ったほうが、日本と韓国双方の利益になりそうな気がします。

 北朝鮮に関わる問題は、日韓で利害が一致することもあると思います。そういう事柄に関しては従軍慰安婦問題に関わらず連携するべきだと思います。従軍慰安婦問題と北朝鮮問題はまったく別問題です。もし日韓のどちらかが従軍慰安婦問題によるわだかまりで、北朝鮮問題で連携を拒むようなら、それがお互いに不利益をもたらすと説得し理解を得て、連携をしなければならないと思います。
 
それにしても日本にとって一昨年の従軍慰安婦日韓合意は、10億円という大金を拠出したうえに、韓国国内の反日感情をあおることになったようにも見えます。日本のメリットは小さいように見えます。

 この日韓合意は、安倍首相が力を入れていた外交上の取り組みだったように見えます。
 しかし日本にとって有益な成果があったとはいえないと思います。むしろマイナス面のほうが大きいという見方が出来ると思います。

 そのようなことを考えながら第二次安倍政権の外交を振り返ってみると、鳴り物入りというか大仰に取りかかりながら、目立った成果がないということが多いと感じます。
 北朝鮮拉致問題に関して、大々的に行動を起こしておきながら、結局一ミリたりとも進展しなかったように感じます。
 昨年のプーチン露大統領の来日も、事前の安倍首相の意気込みの割には、成果が大きかったとは言えないように見えます。
 そして一昨年の従軍慰安婦に関する日韓合意も、前途したように日本にとっても韓国にとっても、むしろマイナス面のほうが大きくなりかねないのではないかと思います。
 こうして振り返ってみると、安倍外交に点数をつけるとすれば、決していい点数はつけられないと思います。
 しかし日本国内では、安倍外交に対する評価はそれほど厳しくないように見えます。
 それはここに挙げた三つの事柄は、非常に難しく、安倍首相が力を入れてもどうせ解決や進展はないだろうと、多くの国民が感じているからかもしれません。

 安倍外交に対する評価は、日本国内では甘いようにも見えます。外国ではもっと厳しい点数がつけられているかもしれません。