2013年11月22日金曜日

いつごろだろう



 かつて、好きな映画は記憶に留めようとしていました。
まだ家庭用ビデオが世の中になかったころ、好きな映画を好きな時に見ることは出来ませんでした。
今でも時々耳にしますが、気に入った映画を何回も観るために、何回も映画館に足を運んだという話を聞くことがあります。
僕は同じ作品を何度も観たことはないのですが、「名画祭」などと銘打って名作映画が上映されると、同じような企画で観た作品を複数回鑑賞することはあります。

また、気に入った作品はパンフレットやサウンドトラックを購入していました。
パンフレットを眺めながら音楽を聴くことで、記憶に焼き付けた場面を思い返していたのです。
そうしていると、その映画をさらに好きになるような気がします。作品に対する思い入れが強くなるといえるかもしれません。

そのように好きな場面を思いかえすことも、映画の楽しみ方の一つだと思います。家庭用ビデオやDVDなどで、作品そのものを見ることとは違った”楽しさ”があると思います。
劇場で観るしかなかった映画ならではの楽しみ方といえるかもしれません。それもまた格別だと思います。

ただ、映画を形にして手元におきたいという思いは常にありました。パンフレットやサウンドトラックを買ったのは、記憶を呼び起こす道具としてというだけでなく、劇場でしか観られない映画を形あるものにして持ち続けたいという欲求があったのだと思います。

そんな映画を、劇場以外で見られるのがテレビ放送でした。ただやはり、家庭用ビデオやDVDなどと違って、テレビ局が放送してくれなければ見られません。
そのため、かねてから見たかった名画が放送されると、とても嬉しかったものです。
民放ではCMが入りますし、放送時間に合わせてカットされる場面がありますし、大抵は吹き替えですが、それほど嫌だとは思いませんでした。
”ノーカット、字幕”のほうが嬉しいと思っていましたが、見られるだけで喜んでいたように思います。

それから家庭用ビデオデッキが世の中に普及すると、映画を見ることが急速に手軽になった感があります。
販売用ビデオは高額で手が届きませんでしたが、その代わりといってはなんですが、レンタルビデオ店があちらこちらに見られました。
僕も利用しましたし、閉店するときにビデオを譲ってもらったことがあります。
また、ビデオデッキを購入してからは、テレビ放送された映画を録画しました。
販売用ビデオは高くてなかなか買えなかったため、テレビ放送を録画して映画を手元に残しておきたかったのです。
特別にノーカットで放送され、通常の放送時間より長くなっているときは、CMになるたびに録画を止めたり、途中まで3倍モードで録画したりしたものです。
実際それは今でも残っています。
そして、今でも時々見ることがあります。

そうするとそのCMにも時代を感じることがあります。思わず「なつかしい」と声に出してしまうこともあります。
そして『あの頃は、このCMが流れていたんだな』と思うのです。
しかし、その”あの頃”がいつなのか、多くの場合よくわかりません。何年も前のことだということは確かなのですが、では何年前かと考えても思い出せないことがよくあるのです。

イベントの告知CMなども録画されているのですが、月日は大きく示されているものの、大抵は何年なのかは表されていません。
ただ、時々大手メーカーの商品のCMを見て『そういえばこのカップ麺、あの頃よく食べてたな。そうなると、大体20年くらい前のCMかな』という感じで年代がわかることもあります。
しかし多くの場合、『このカップ麺よく食べていたけど、いつごろだっけ?』と考えてしまうのです。

そのように昔録画したテレビ放送のCMからでは、年代はわからないことが多いのですが、年末年始に録画したものは、それが明白です。
新年の挨拶のCMが立て続けに流れる正月は、干支と何年なのか大きく表されているものばかりです。
また年末年始でなくても、12月になると翌年のイベントを告知するCMがあります。それには年月日が明示されています。

なつかしいCMを見ながら『いつごろだっけ?』と考えることが多いため、このように年月日が明確にわかると、なにか妙にスッキリした気分になります。