少し前から、景気が上向きになっているという雰囲気があると思います。
それは、“雰囲気づくり”によるところも少なくないと思います。景気が上向きだという雰囲気をつくろうとしていると感じるのです。
その“雰囲気をつくろう”という雰囲気も感じられます。
“みんなで景気は上向きだという雰囲気をつくろうぜ”という雰囲気です。
それは経済対策として、効果があることだと思います。景気は心理によって左右されるものだと思います。
一人ひとりの心理が雰囲気をつくり、全体の雰囲気が一人ひとりの心理に影響を及ぼすものだと思います。
そうなると、いい雰囲気を作ることで、一人ひとりの心理が上向きになるものだと思います。そして全体の雰囲気は良くなり、お金やモノが動くようになるものだと思います。
デフレスパイラルは、お金とモノの動きが小さくなり続けていくことだといえるかもしれません。
そこから抜け出すには、お金とモノが動くようにするのは一つのやり方だと思います。そのために雰囲気をよくするのも、一つのやり方だと思います。
そして、雰囲気をよくするやり方の一つが、“みんなで雰囲気をよくしよう”という雰囲気を広めることだと思います。
それは意図的に“雰囲気を盛り上げよう”としている場合もあれば、無意識に“この雰囲気に水を差さないようにしよう”としている場合もあるように見られます。
“金融一本槍”と感じられる経済政策は、雰囲気を作ることが目的の一つだという気がします。
金融は数字で表されることだと思います。そして、数字には説得力があるものだと思います。
人間は数字を信用するものだと思います。“数字が必ずしも実態を表しているわけではない”頭の中にはそういう考えがあるものの、それでも人は数字を信じるものだと思います。
数字で示されていることを、“事実”として受けとめ、“事実”とは絶対的なものだと認識するものだと思います。
そう考えると、数字によって実体を引っ張るのも、一つの方法だと思います。ただ実体がなければ触れることも食べることも出来ないと思います。
また、近年の金融市場は安定感が低くなっていると感じます。世界経済の変化や、情報技術の発展などがあると思いますが、数字の動きが速く、振れ幅が大きく、予測が難しいような気がします。
不安定な金融市場に頼る政策は、すなわち不安定な政策だという見方もあると思います。
“みんなで雰囲気を盛り上げよう”という雰囲気が広まっているのは、多くの人が今の経済政策に“不安定さ”を感じ取っているからかもしれません。
近年、雰囲気が景気を落ち込ませる大きな要因になったときがあったと思います。リーマンショック後の日本経済の落ち込みようは、雰囲気によるところが大きいような気がします。
それを感じとっている人は少なくないような気がします。無自覚かもしれませんが感じているため、今度は雰囲気が悪くならないように盛り上げようという意識が働いているような気がします。
リーマンショック前の数字をみると、あらためて“いい数字だ”と思わされます。まさに“好景気”といえるような数字だと感じるものがあります。
ここでは何回も書いていますが、ではリーマンショック前のことを思い起こすと、多くに人は“好景気だ”などとは感じていなかったと思います。むしろ“不景気の真っ只中だ”という印象が強かったような気がします。
それは“雰囲気”といえるかもしれません。
“経済成長を感じられない”当時からたびたび耳にしていたような気がします。
しかしある意味楽観的だったような気がします。
“だって、人件費を削ったおかげで利益があがっているんだから、好景気を感じられないのはしかたないよ。まあそのうち、雰囲気はよくなるさ”
振り返ると、それが大きな問題だったと思います。
好景気を感じられなかったため、リーマンショックの後、“ここまで落ち込むことはないはず”というところまで落ち込んだように感じられます。
経済が成長しているのに“不景気の真っ只中”だと感じていたのですから、そこでリーマンショックによって経済が落ち込んだのでは、雰囲気の沈み方が必要以上に大きくなったのも無理はないような気がします。
結局、“ここまで落ち込むことはないはず”というところまで、経済も雰囲気も大幅に沈み込んだと思います。
せっかく“経済成長”をしていたのに、台無しになった感があります。
台無しになったばかりではなく、さらに沼底に引きずりこんだように感じられます。
今の“雰囲気をつくろう”という雰囲気は、かつての反動だという気がします。