子供のころ、産業用ロボットを取り上げたテレビ番組や雑誌などを見たり読んだりすると、『これがロボットか。なんかつまんないな』などと思ったものです。
あのころ、『ロボット』という言葉からまず連想するのは、アニメに登場する正義のために戦うロボットでした。
人型をしていて、しかも“かっこいい”造形をしているものです。
しかし産業用ロボットは、そんなアニメや漫画で描かれるロボットとはかけ離れたものばかりでした。
“ロボット”ではなく“工場の機械”だと感じたものです。
『これなら、わざわざ“ロボット”って呼ばなくてもいいんじゃないのかな。工場にはいろんな機械があるんだから、その一つにしか見えないんだけど』
そう考えながらも、『現実はこんなものだろう』という思いもありました。
現実でロボットが使われるなら効率性が求められるだろう。そうなると人型をしていないほうがいいのだろう。人型をしたロボットが現実で実用されることなどないのだろう。
僕だけでなく、多くの子供たちはそう思っていたような気がします。
僕が若者になったころ、二足歩行するロボットの研究開発が行われているという話題を見聞きするようになりました。
ただ、実用性を重視している研究だとは思わなかったような気がします。二足歩行ロボットを実用化するよりも、その技術をより現実的なものに応用することや、技術力を示すことで宣伝になるということを考えた研究開発という印象を受けたものです。
しかし近年、二足歩行だけでなく人間と同じような形をして、人間と同じように動くことが出来るロボットの研究や開発が、世界中で盛んにおこなわれていると聞きます。
『人型ロボットは現実的にみると効率性に劣る』
そうではないと考えられるようになってきたのかもしれません。
考えてみれば人間が暮らす社会では、人間と同じ形をしていて人間と同じ動きが出来る機械は、様々なことで役立つような気がします。
工場で使われるロボットも、人型に近づいているものがあるとテレビでみた覚えがあります。詳しいことは忘れてしまいましたが、人間とロボットが並んで仕事をしている工場があるようです。
そのロボットは固定されているため足はないものの、二本の腕を持ち、“顔”を思わせる部分があり、毎朝始業前には人間の従業員と一緒に体操をしているようです。
その様子をみて“工場の機械”であるものの、確かに“ロボット”だという印象を受けました。
おそらく意識してロボットに見えるように作られているのだと思いますが、効率性を度外視しているわけではないのだろうと思います。
人間が手作業でやっていたことを、ロボットに任せるとなると、腕が二本あったほうがいい場合もあるような気がします
また人間と連携した工程になっているのなら、機械も人間に近い動きをしたほうが効率的な場合があるような気がします。
そうはいうものの、すべての工場でロボットが人間に近づいていくわけでないと思います。機械化の進み方も、各々の工場によって随分違うと思います。
ただ思い起こしてみると、『工場はオートメーション化が進み続けていくものだ』子供ころ、そんな印象を持っていたような気がします。
どんな工場でも、どんどん機械化されていき人間は少なくなる一方なのだろうと思っていたのです。
大人たちからそう聞かされていたような気がします。
未来を空想した話でも、真面目に予想した話でも、工場は機械化され、生産工程は自動化されていくというものが多かったような気がします。
国内の生産量は増え続け、そのためにも生産は機械化が進み続ける。大人たちはそう考えていたのかもしれません。
確かに僕が子供のころから比べたら、工場の機械化は大きく進んだように思います。
ただ近年、工場が少なくなっているようにも感じます。生産量が増え続けるわけではなかったことはその理由のひとつかもしれません。
また、安い人件費をもとめて海外の工場で作ることが増えていることが、大きな理由のような気がします。
工場が機械ばかりになり人間が少なくなったら、人件費を安くするために外国で生産することもなかったような気がします。
機械では出来ないことがあるのだろうと思います。
また機械で出来るとしても、それを導入するにはお金がかかると思います。
そのお金より、人間の給料のほうが安く済むこともあるだろうと思います。
人間を使うなら、さらに費用を低く抑えるために、日本より人件費が安い国で作ることもあるだろうと思います。
人件費が安い国も、経済が発展すると働く人の給料も上がってくると思います。そうなると、別の人件費の安い国で作るようになっているような気がします。
日本には人間をあまり必要としない工場もあるのかもしれませんが、多くの人間を必要とする工場もあるのだろうと思います。
それが多いのかもしれません。それゆえに日本には工場が少なくなったと感じられるのかもしれません。