初めて電気こたつが我が家に来た時、すばらしいものだと思ったものです。
何度も書いているような気がしますが、僕が物心ついたころ、こたつは豆炭で暖めるものでした。
随分前のことですので、記憶があやしくなっていますが、幼い子供のころ、家族で一番早くおきていた時期がありました。中高生のころは毎朝苦労して床を出ていましたが、小学生のいつごろかまでは、一番目起きることを自慢にしていたのです。
しかし、冬は一番目に起きても、暖房をつけられません。火を使うストーブはもちろんですが、こたつも豆炭ですので火を使います。
親が豆炭を入れてくれるまでこたつの中が冷たいのです。しかも、豆炭は火を使うのですが、暖かさを発散するまで少し時間がかかります。
いつも『はやく暖まらないかな』と思っていたものです。
それが電気こたつは、火を使うことなくコンセントに差し込むだけで済みます。それは子供でも簡単に出来ることでした。
また、すぐに暖かくなります。あのころの僕は、豆炭こたつに対する不満がすべて解消されたすばらしい暖房器具だと思ったものです。
振り返ってみると、あの時電気こたつに対して非常にいい印象をもち、それが心理に根付いているような気がします。
だから今でも電気こたつが好きなのかもしれません。
我が家の茶の間からこたつがなくなって久しいのですが、僕の部屋の暖房器具は電気こたつだけです。
そのことについても、冬になるたびに書いているような気がします。上半身が寒いため、寝転んで肩までこたつに潜りこんでいると、すぐにうたた寝してしまいます。
最近は、こたつで居眠りする心地よさに抵抗できなくなってきました。
ただ、こたつで寝てしまうと低温やけどを負ってしまうこともあるかもしれませんし、体調を崩すこともあるかもしれませんので、注意しなければなりませんし、出来るだけ居眠りするべきではないと思います。
そのように僕は個人的にこたつが大好きなのですが、電気こたつの生産台数は下がる一方だと聞きます。
エアコンの暖房で部屋全体を暖めるため、下半身だけ暖まるこたつは必要ないと考える人が増えたのかもしれません。
僕自身、エアコンがついているアパートで暮らしたときは、こたつも使っていましたが、帰ってくるとまずエアコンをつけていました。
またソファに座る生活様式では、こたつを使うことは出来ません。普段ソファを置いている部屋で生活している人が、冬になるとそれをしまってこたつを出すのは煩わしいだろうと思います。
そう考えると、今の日本ではこたつの利点が小さくなっているといえるような気がします。
“こたつのよさってなに?”
情緒的なことばかりが浮かんできます。実用面におけるこたつの利点をなかなか挙げられないのです。
使い方によっては、エアコンだけに頼るより、電気使用量が少なくて済むのではないだろうかと思いましたが、正確な数字をもとにしているわけではありませんし、実際に試しているわけではありません。
そう考えると、こたつのよさは“情緒”であり、それが求められなくなると、消えていくのが定めなのかもしれません。
ただ数年前から“こんなこたつがあったらいいのに”と思っているものがあります。椅子に座ってパソコンデスクに向かっていると足元が冷たいのです。
それは僕だけではないようで、事務職の人が、足元に電気ストーブをおいて、ひざ掛けを使っていると聞いたことがあります。
それなら、パソコンデスクや事務机を“こたつ型”にすることは出来ないものだろうかと、考えることがあります。
普通のこたつを高くし、椅子に座って入れるようにしても、こたつ布団をめくり上げなければならないため、中の熱が逃げてしまいます。
ソファに座っては入れる高さのこたつを作っても同じだと思います。
そのため、腰掛ける姿勢でこたつに入るには、掘りこたつにするしかないような気がします。
しかし、家庭に掘りこたつを作るのは大変だと思います。
ましてや事業所の事務所に堀こたつを作って、そこで仕事をするわけにはいきません。
ただ何かしらの工夫をすれば、事業所の事務机やパソコンデスクを“こたつ化”することも出来なくはないような気がします。
こたつ布団の代わりに、保温シートを使うことで、靴を履いたまま入れるように出来ないだろうか。その保温シートの、人が入る部分を短冊状にして垂らすことで、中の熱を逃がさないように出来ないだろうか。そのような“こたつ型事務机”を導入することで、エアコンの暖房を弱め、費用を削減することは出来ないだろうか、などと想像することがあります。
また、一般家庭向けに、ソファとセットにした形状にすることで、腰掛ける使い方をしても熱が逃げないように工夫された“リビングKOTATU”を作ることが来ないだろうか。こたつとエアコンを併用することで、家庭の電力代を抑えられないだろうか、などと空想することもあります。
しかし、気が付くと春が来ているのです。