2014年11月21日金曜日

本を買う楽しみ

“せっかく買ったのに、何年も読まずにいる本棚で眠っている”
そんな話を時々耳にします。僕自身、経験があることです。
 本屋さんでは、確かに『読みたい』と思って買ったのに、なかなか読み始めなかったり、読み始めたものの途中でやめてしまったりして、長い間そのままになっている本が何冊もありました。

 数年前、そのように溜まっていた本をすべて読みました。もう記憶が薄らいでいますが、5~7冊だったような気がします。
 僕は、これから読む本を置く場所を決めています。“本の待機所”です。
 ずっと前、そこで待機している本は、1~2冊でした。
 それが自然に増えていったのです。
 そして待機している期間が長い本ほど、そこに留まるようになりました。

“先入れ先出し”、つまり買った順に読んでいくつもりだったのですが、どうしても“後入れ先出し”状態になっていました。
 やはり読みたいと思ったから買うのであって、買ったからにはすぐ読みたいものです。
 ただ僕の場合、本を買う時点で、大抵は読みかけの本があるのです。
 本を読み終わる前に、次に読む本を買うといった感じです。
 
 そして本を読了後、『さて次の本を読もう』となったとき、“本の待機所”に置いた数冊の中から、選ぶことになります。
 やはり新しくそこに加わった本のほうが、古くから待機しているものより『読みたい』という意欲が強いものです。
 結局、新しく買った本に手を付け、それを読んでいるうちに、また別の本を買ってきて待機させるのです。
 僕の“本の待機所”は古参の本が、そこにあり続けることになっていきました。

 途中で読むことをやめてしまった本も、“本の待機所”に送りかえす形になっていました。
『読み始めたからには、とにかく読み通そう』、何度も自分に言い聞かせるのですが、新しい本を買ってしまうと、それを『読みたい』という意欲が勝ってしまうのです。
 結局、読み進めることに苦労しながら、それでも読んでいた本を中断して待機所に戻り、新しくかって来た本を読み始めるのでした。

 そのように途中で読むことをやめてしまった本は、『いつか改めてはじめから読もう』と一応誓うですが、それが果たされることは稀でした。
中断した本を改めて読みなおす意欲は、手つかずのまま待機している本を読む意欲より、弱いものだと思います。
そして、手つかずのまま待機している本を読む意欲は、新しく買った本を読む意欲より弱いものだと思います。

 しかし数年前、意を決してというのも大げさですが、長年待機していた本をすべて読むことにしました。
 とにかく“待機図書”がゼロになるまで、新しく本を買わないと決意したのです。
 そしてその決意を果たし、長年買ったまま読まずにいた本をすべて読みました。
『どうしてこんなにいい本を、何年も読まずに放置していたんだろう』
 そう思う作品がありました。
 また一度は読み始めたものの、途中で中断していた本の中にも、『あの時は、あんなに苦労して読んだのに、今はすんなりと読み進められる』と感じたものがありました。
また、改めて読んでみても最後まで読み切るのに苦労した本もありました。
ただいずれも、読書体験として意義があるような気がします。

“待機図書”をゼロにした後、再び“本の待機場所”に溜まらないように、一度に買う本を2冊までにすると決めました。
 それと2冊目を読み始めるまで、次の本を買わないことにしました。
 しかし、いつの間にかその規制は緩んでいました。
 一度に買う冊数を3冊に引き上げたのです。古本店を利用した時です。

 僕は新書も古本も、インターネットで購入することがあります。しかしどちらも書店か古本店で買う方がずっと多いのです。
 古本の場合、読みたい本、読みたかった本、それが古本店に売られていなければ、買うことは出来ません。
 そうなると、古本店に並んでいる時に買わなければならないという気になるのです。
 インターネットで買うなら、欲しい時に、欲しい古本が簡単にみつかります。
 しかし実店舗でたまたま見つけた古本には、“たまたま店にこの古本があった”それ自体が購買意欲をそそるのです。
 
 そこで2冊までとした決まりを、古本にかぎり3冊までに引き上げました。
 しかし一度規制を緩和してしまうということは、歯止めが弱くなるということになるものです。
 新書でも、3冊まで買ってもいいということにしました。
 そして少し前、ついつい古本を5冊まとめ買いしていまいました。
 その時点で読みかけの本がありました。それを読み終わってから、買ってきた5冊を順に読むつまりだったのです。
 しかしその5冊に手を付ける前に、書店で新書を2冊買ってしまいました。

 結局、一時1~2冊しかなかった“本の待機所”が一気に7冊になってしまったのです。
 これを読み切るまでは新しく本を買わないと固く決心し、今のところそれに従っています。順調に“待機図書”を消化し、現在は4冊になっています。
 それにしても本は、実店舗で実際に手に取ると、読みたくなるものだという気がします。 

そして、実際に手に取って読みたくなると、買いたくなるものだという気がします。