2014年11月4日火曜日

戦略

 戦闘中、また戦闘が始まる前、戦闘員の逃亡は雪崩式に起こるものだと思います。
 味方が逃げ出すということは、味方が少なくなるということになります。
味方が逃げ出すのだから、敵は相当に強いはずだと考えるものです。
 そんな強い敵と戦うのに、味方が少なくなっては、さらに不利になります。到底かなわないと感じることもあると思います。
そうなると、逃げるのが遅くなればなるほど、自分の身が危なくなります。
 そうなると、誰もが我先に逃げようとすると思います。
 味方より先に逃げ出したほうが、自分が助かる可能性が高くなるのです。
 
 また戦闘という命にかかわる状況に置かれると、危険度の認識と、恐怖心は強まるものだと思います。
 それに人は逃げている時や逃げようとしている時に、恐怖心を抱くものだと思います。
 味方が逃げ出す様子を目にすることも、危険を大きく認識させ、恐怖心を高めさせると思います。
 武器を放りだし、戦闘服を脱ぎ捨て、味方の誰よりも先に逃げ出そうとするものだと思います。

 また人は、危険度を高く見積もり、恐怖心を強く感じる心理があると思います。それは生物として、生き延びるため備わっている本能的なものかもしれません。
 その心理から、『危険だ』『残虐だ』という伝聞を、割り増しする傾向があると思います。
 伝聞の内容が事実だとしても、危険度や恐怖の感じ方が強まるものだと思います。
 人はそれを自覚することは少なく、また制御することは難しいと思います。

自分たちの陣地の手前で逃亡があったと聞くと、敵を強力だと感じ、恐怖心が強まり、危険度の認識が強まり、味方の誰よりも先に逃げ出すことが、生き残る方法だと考えるようになることがあると思います。
「武器? ほっとけ! そんなもん持ってたら、兵士だってばれるじゃねえか!」
敵が来る頃には、みんな逃げ出してしまっていることもあると思います。
それが次の陣地でも起きることがあると思います。

過激派武装勢力は戦闘をすることなく、進撃することが出来たといえるかもしれません。
戦闘員も弾薬も減ることなく、しかも逃亡した敵が残した武器弾薬を手にいれることが出来たのですからこんないいことはないと思います。
しかも、すさまじく強く、恐ろしく残虐だという印象を強烈に植え付けることが出来たと思います。
捕えた敵兵があまり多くても進撃には邪魔になりますし、残虐性を世間に知らしめるためにも、残酷な所業をすることもあったと思います。
過激派武装勢力が、強く残虐なのは間違いないと思いますが、あまり戦闘を行わずに、進撃したことも確かだと思います。

また一旦は過激派武装勢力が制圧した地域を、民族軍や正規軍が奪還することも散見されていると思います。
過激派勢力が再び攻撃を仕掛けることもありますが、それよりも別の地域に戦力を差し向けることが目に付くような気がします。
それに他の過激派勢力が制圧した地域を、横取りすることが多いように感じます。それも、取りやすいところを取りにいっているという印象があります。

また空爆を受けて残虐な行為をみせたのは、軍事的に対抗できないことの表れかもしれません。
過激派勢力も、軍事的に空爆に対抗できるようになるでしょうが、あの時は恐ろしい映像をみせて脅すしか策がなかったのかもしれません。
過激派勢力の中に空爆を恐れる心理があり、それが“脅す”というやり方を発想させたのかもしれません。

「とにかく悪者をやっつけろ!」「はやく、恐ろしい敵を叩きつぶせ!」
 大衆はわかりやすいことを望むものです。単純で明朗な解決を求めるものです。
 しかし状況は非常に複雑です。単純で明朗な解決法は、今のところ存在しないと思います。

 反政府勢力も、宗教の過激派勢力も複数あります。そして独裁者はあくまでも徹底抗戦の構えです。
 昔だったら、いくつかの勢力が、当面は共闘するなど、一時的であれ手を組むということもあったと思います。今はそうならないと感じます。それは世界的な風潮だと感じます。人間がみな、戦略的に妥協や譲歩をすることが出来なくなっていると感じます。

 複雑な状況では、長期的な戦略が必要だと思います。
 周辺国で過激派勢力を攻撃し、独裁者がいる国に押し込めてしまうことも戦略の一つだと思います。その国内だけで過激派の勢力が広がるということは、争いの構図を単純化することにもなると思います。またその国に過激派勢力を閉じ込め、国内だけで力をつけることで、独裁者が他国に協力を求めざるを得なくなるかもしれません。もし大国に泣きつくことがあれば、独裁者に色々な条件を飲ませることが出来るかもしれません。また独裁者と過激派勢力が結託するようなら、むしろ叩きやすくなるという見方が出来るかもしれません。仮に結託したとしても、どうせ長続きしないだろうと思われます。ただ国内にも、周辺の国にも独裁者を支持する人もいれば、過激派に味方する人もいると見られます。だから色々と難しいのだと思います。

 長期的な戦略は、目で見えることを示せないことが多いと思います。
 また長期的な戦略は、不確定要素が入り込む余地が多く、それに対応するために戦略を変更しなければならないことも多いと思います。
 そして長期的戦略は成果がでるまで時間がかかります。
また長期的戦略に限らないことですが、結局は成果が出ないこともあれば、失敗することもあります。


 ただその国の国民が自分たちで、独裁者と過激派がいなくなった後、国を治める勢力を作らなければならないと思います。それがない現状では、大衆が喜ぶようなわかりやすい解決など存在していないと思います。