2014年11月17日月曜日

増税先送り

 正直に言って、DGPの速報値がマイナスになるとは思っていませでした。
 こうなると消費税の税率を予定通り、来年の10月に引き上げるのは難しいと思います。
このタイミングで増税を発表すること、それ自体が経済の雰囲気をさらに悪くすると思います。
 それは日本の経済にとって大きなリスクだと思います。
 増税先送りもやむを得ないと思います。

 人間は、数字に説得力を感じるものだと思います。
 数字が絶対に実態を表しているわけではないと思いますが、やはり数字で示されると、“正確さ”を感じるものだという気がします。
また、“動かしがたいもの”とか“客観的なもの”という印象を抱くものだと思います。
『数字が必ずしも実態を表すわけではない』頭でそう考えても、心理は数字を信用するものだと思います。
そして数字にマイナスの記号がついていると、その数字から受ける印象が大きくなることがあると思います。
 マイナスの数字は、負の印象を強く持ちやすいと思うのです。

 現在の日本の経済に関する雰囲気は、決してよいとはいえないと思います。
 マイナスの数字を見せられただけで、雰囲気は沈みやすいものだと思います。
 そんなときに、増税を発表したのでは、さらに雰囲気が悪くなる可能性が高いと思います。
 もしかしたら来年の10月までには、景気がよくなるかもしれません。
 しかし増税を発表したことで雰囲気が悪くなり、それが景気回復の足を引っ張る要因にもなると思います。
 
 やはりマイナスの数字が出ているとなると、増税は先送りするべきだと思います。
 そして、増税は実施するにしても、先送りにするにしても、早く決定しているほうがいいと思います。
 特に増税する場合は、出来るだけ早く増税に意識を向けたほうがいいと思います。
 今後、GDPの数字が確定したときは、マイナスの記号がついていないかもしれません。しかし一度速報値でマイナスを見ていると、どうしてもその印象が強いと思います。
 それが雰囲気に強く影響すると思います。
 
GDPがマイナスになるらしいと聞いたら、あわてて動く必要があっただろうと思います。
 何事も、大方の予想より相当に悪いときは、あわてて動かなければならないと思います。

 マイナスの数字がでた理由は、消費税の増税による影響が大きいと見られます。
“増税前に買いこんだため、増税後は買わなくて済む”ということだけでなく、消費意欲を冷え込ませた感があります。
 それと夏の天候不順が、経済活動を活発にする妨げになったと見られます。

 ただ消費税を二段階で引き上げることは決まっていたのですから、5%から8%にあげる前の経済を見る必要があると思います。
 一時、首相の名をもじった経済政策は、日本経済の雰囲気を良くしたと思います。
 しかし消費税を5%から8%にあげる時、ちょうどそのころ経済政策の勢いがなくなったと感じます。
 明るい雰囲気が失速した感があるのです。
 
 もともと首相の名をもじった経済政策は、イメージを先行させるやり方だったと思います。
 それはある程度の即効性がある反面、経済の芯が強く太くならないという側面があると思います。
 熱しやすく、冷めやすいといえるかもしれません。
 そして冷める時のほうが、温度の下がり方が速いような気がします。

 イメージに頼った経済政策は、“いいイメージ”を長期間持続させることが難しいと思います。
 消費税を8%にあげることを「私が決断しました」といった時点では、まだイメージがよかったような気がします。
それが実際に税率を引き上げた時には、そのイメージが沈んでいたように感じます。

 その理由に一つに、政治の目が経済に向けられなくなったことがあると思います。
 首相の意欲が、経済から安全保障など個人的に思い入れがある事柄に向けられ、それによって国民の経済に向けていた意識も薄らいだ感があります。
『これで経済は大丈夫だ。これからはやりたかったことをやるぞ』
 本人の自覚の有無はわかりませんが、なんとなくそのような意識が首相にあったような印象があります。

 しかし上に書いたように、まず“いいイメージ”を作って、それに実体を引っ張らせるような経済政策は、長く持続させるのが難しいと思います。
“いいイメージ”を長く続けることが難しいからです。人々が経済に向けていた意識が薄らぐだけで、イメージは萎んでしまうこともあると思います。
 消費税を8%に増税した時、まさにそうなっていた感があります。

 それにしてもあの時はすでに、“いいイメージ”を持続させるための手を出し尽くしていた感があります。
成長戦略という、経済の芯を太く強くする政策を打てないままイメージに頼り続け、しかも“いい気になっていた”というか、ある意味油断があったと感じます。

大失敗だとまではいえないと思いますが、経済政策の進め方としては、まずい点があったと感じます。