2014年11月1日土曜日

結局、自分に回ってくる

 西アフリカに赴いて医療活動を行う人がいなければ、エボラ出血熱はとっくに世界中に蔓延していたと思います。
 アメリカにも日本にも感染は拡大したと思います。

その時になってあわてても感染を食い止めるどころか、状況は悪くなる可能性が高いと思います。
 誰もが疑心暗鬼に陥り、虐待や迫害が各地で起こるかもしれません。
 多くの人が恐慌状態に陥り、暴動や略奪が各地で起こるかもしれません。
 感染者が自暴自棄に陥り、爆発的に感染を広げようとバイオテロ行為に及ぶかもしれません。
 世界中が壊滅的な打撃を受けることもあり得ると思います。
 人類が滅亡することもあり得ると思います。
 
『今の世界で、そんなことになるはずがないじゃないか』
 多くの人はそう感じていると思います。
 ただ明確な根拠がないまま、漠然と信じているといった感があります。

『ウィルスで人類が滅亡する? それは映画の話だよ。人類は高度な科学や医学を持っている。そりゃエボラには手こずっているけど、いつか沈静化するに決まっているさ』
 そうとは限らないと思います。
 
 感染が拡大している地域で医療活動に従事するのには、並大抵のことではないと思います。
 感染症は、医療従事者が感染する危険性があります。
 人類は何度も疫病に襲われていると聞きます。そのなかには、医療に携わる人が感染することで、その病気を取り巻く状況が悪化したことも度々あるだと聞きます。
 
 医療従事者は、自らが感染する危険性を背負って治療に当たり、感染拡大を防ぐ活動をしていると思います。
 また先進国から、アフリカの地に行っているのですから、様々な苦労があると思います。
 設備や機器が十分ではないようですし、インフラが整っていないことによる医療活動の制限などもあるだろうと思います。
 それに生活するだけでも、色々と気を付けなければならず、親しい人と離れなければならないこともあると思います。
 
現地で医療に携わっている人は、危険を背負い、苦労を強いられながら、努力しているのだろうと思います。
きれいごととして持ちあげるつもりはないのですが、大変な状況の下で人類にとって必要なことを行っているのは確かだと思います。

『それが報われているの?』
人それぞれだと思います。
ただ帰国後、差別的な扱いを受けていると感じている人が少なくないようです。
『差別的な扱いを受けている』そう感じることそれ自体が、大きな苦痛だと思います。

大変な状況で人類にとって必要なことをしていたのに、帰国してから大きな苦痛を受けるのでは、あまりにも割に合わないような気がします。
“危険がある”それだけで現地で医療に従事するのは憚られるものだと思います。さらに多くの苦労を強いられるのですから、“行きたくない理由”があふれているという気がします。
 
そのうえ帰国した後、差別され、犯罪者のようだと感じる扱いを受けたのでは、行く人がいなくなってしまうこともあり得ると思います。
 完全にいなくならなくても、激減したら感染拡大防止力が弱まり、何かちょっとしたことがきっかけで爆発的感染が起こらないとは限らないような気がします。
 爆発的感染が起こったら、世界は恐慌状態になり、手の施しようがなくなり、人類が滅んでしまうということも、まったくの空想話ではないような気がします。

現状でさえ医療従事者が不足していると聞きます。それが十分な治療が出来ない要因の一つだと聞きます。それは即ち、感染拡大を防ぐ力が強まらない要因だと思います。
この上、あまりにも割に合わないため、現地で医療に従事する人が減ってしまうと、抑え込むことが出来ないばかりか、感染を広がることになりかねないと思います。
感染が広がるということは、先進国の人たちの危険度が高まるということだと思います。

 感染地で医療に従事して帰国した人に精神的苦痛をあたえることは、結局、先進国の人たちの危険を高めることになりかねないと思います。
 しかし感染地で医療に従事して帰国した人に精神的苦痛をあたえるような言動をとる人の多くは、それに気づいてないと思います。
 そして、これはどこの国でも起こり得ると思います。日本でも起こり得ると思います。
 自分たちが感染する危険性は、限りなくゼロであったとしても、間違いなく絶対に確実にゼロでなければ受け入れられないと考える人は少なくないと思います。
ふと東日本大震のがれきや焼却灰の受け入れを拒否する様子が浮かんできます。

 現地で医療活動を行って帰国した人は、差別的な扱いを避けるためにも、一定期間行動制限を受け入れたほうがいいと思います。
『帰国後の検査は陰性でした。それから40日間、自宅から出ていません。その後の検査でも陰性でした』
そう言えるようにしたほうが、自分のためになるような気がします。
 
『そうまでしなきゃならないの? 立派な人権侵害じゃない』
 確かにそうだと思います。しかし二次感染が起きているのですから、そうまでしたほうが、結局自身のためになるような気がします。
精神的苦痛も社会的な不利益も少ないような気がするのです。

 ただし当局や担当者や周囲の人は、西アフリカでエボラ出血熱と戦ってきた人に対して十分に配慮するべきだと思います。

 行動を制限するということは、帰国してまで苦労や不自由を強いるのですから、出来るだけ精神的苦痛がないように計らうべきだと思います。