2014年6月10日火曜日

借り物の思考と、思い込みの真実

“あの時、大国が軍を動かしたら、独裁者を倒すことが出来ただろうか”
 何ともいえないと思います。
不確定要素が無限にあり、可能性もまた無限にあるような気がします。

“あの時、大国は軍事力を行使するべきだったのか?”
 個人的にはそうではないと思います。
報道などを見聞きすると、あの時点で大国が軍事力をもって攻めることは、内戦が起きた国にとっても、大国にとっても、よくない事態に繋がる可能性が高いと思います。
 
その後の状況や戦況から推察すると、空爆で脅しをかけるだけでは、独裁者は引き下がらなかったような気がします。
しかし独裁者を倒そうとすると、大国の軍をもってしても、独裁者を倒すのは容易ではなかったと思います。空爆だけではなく、より大規模に軍を展開させなければならなかったように感じられます。
そうなると別の大国や新興国は、強く反発したと思います。

 また内戦が起きた直後から、周辺の過激な勢力が動き始めていたと感じます。
 中東で相次いで起きた政変では、どの国も円滑に民主化が進んだとはいえないと見られます。
そこで過激な勢力は、独裁者が倒されたなら、自分たちの影響力を強めようと狙っていたと思います。
 実際、内戦がおきるとすぐに武力をもった勢力が周辺から入ってきたようです。
 そんな状況で、大国が軍を展開しても、いいことはないと思います。
 
 仮に独裁者を倒したとしても、多くの犠牲を払わなければならなかったかもしれません。
 また仮に大国が独裁者を倒しても、別の武力衝突が起こったかもしれません。
 周辺から入ってきた過激な勢力を、大国の武力で攻撃したら、その戦いはまた泥沼化するかもしれません。
 その国は戦場であり続け、政治は混乱を続けるかもしれません。
 しかも、大国は過激な勢力から敵視され、テロが増えることになるかもしれません。それは過激になり、被害が大きくなるかもしれません。

 大国が軍を動かしても、内戦が起きた国にとっても、大国にとっても、いいことがなかったような気がします。
 それは、あの時点で“手におえない状況”になっていたからだと感じます。
 必要だったのは、そんな状況にしないことだったと思います。
つまり“手におえない状況”になる前に、事態を収めなければならなかったということです。
 
『独裁者がこれほど強硬に出るとは思わなかった』
そういう人が多いと思います。周辺国では次々に独裁者が倒れていたこともあって、あの国の独裁者もそれほど無理することはなく、どこかで引き下がるなり逃げだすなりするだろう、多くの国の政治家や外交に関わる職員は、無意識にそんな印象を抱いていたと感じます。
 しかしそうではありませんでした。

また、別の大国や新興国が独裁者を擁護したことも、“手におえない状況”にした理由のひとつだと思います。内戦になる前に事態を収めるには、他国が協調しなければならなかったと思います。しかし対立するばかりだったと感じます。
そして、みすみす内戦を起こしてしまったといえるかもしれません。
しかし内戦が起きてしまって、独裁者を擁護した国に得はないと思います。損のほうが大きいと思います。

内戦とは、長引くことが多いものだと思います。この国の内戦は構造が複雑になっていることもあって、終わらせ方が見いだせないように感じます。
別の大国も、新興国も、内戦が続く状況になるよりは、“手におえない状況”になる前に、妥協してでも収めたほうが得だったと思います。

 今の世界は複雑に関係しあっていますので、どこかの国が“丸取り”することなど出来ないと思います。
 丸取りしようと必死になっている間は、何も手に入れならないことあると思います。
 どうせ丸取り出来ないなら、分け合って得られるだけ得たほうが、利益になると思います。
 しかし強硬志向をもつ人は、“得”よりも感情に流されていると思います。
 結局、損をしているし、場合によっては血を流しているにも関わらず、強硬志向の人はそれが正しいと考える傾向があると思います。

 強硬志向をもつ者は政治家にもいると思います。しかし今の世界は、国民の間に強硬志向が強まっていると感じます。
 情報があふれていることが一因かもしれません。情報が十分以上にあるために、人は自分で考えることをしなくなっていると感じることがあります。
自分で考えずに、発信されている情報を持論として取り込んでいる人がいると感じます。
 自分で考えているつもりなっているものの、それは取り込んだ情報をなぞっているだけの人がいるような気がします。
 また情報は膨大にあるのだから、そこに必ず真実があるという観念を強めているような気がします。
 借り物の思考と、思い込みの真実は、感情を高ぶらせるものかもしれません。

 国民の強硬志向が強まると、それに押される政治家がいると思います。
 支持率欲しさもあると思います。それに強硬志向を持つ国民は、声を強く発するものですし、強い行動で表す者もいると見られます。
 しかし過去にも現在にも、国民の強硬志向の強まりが国を不幸に追いやったと感じられることがあるような気がします。