2014年6月23日月曜日

おこられかた

「コミュニケーション能力」という言葉を耳にするようになったのは、ここ数年だという気がします。
カタカナと漢字を組み合せていることからも、新しく作られた言葉だという印象を受けます。

読んで字のごとく、コミュニケーションをとる能力のことを指すのだと思います。
すべての人間は、その人だけの個性を持ち、社会はそんな人間の集まりだと思います。
そんな社会では円滑な人間関係を築く能力が求められるような気がします。
「コミュニケーション能力」とは「人間関係を上手にやりくりする能力」といえるかもしれません。

そのように考えると“おこりかた”や“おこられかた”もコミュニケーション能力の一つといえるような気がします。
他者を怒ることは難しいことだと思います。
他者から怒られることもまた難しいことだと思います。
だからこそ、上手に怒る、上手に怒られる、それが出来る能力は高いほうがいいと感じます。

“能力”は先天的に備わっている場合もありますが、“才能”と違って後天的に高めることが出来るものだと思います。
経験を重ねたり、“技術”や“知識”を身に着けたりすることで、能力は高められると思うのです。
ただ、すべての人間がその人だけの個性をもっているのですから、“上手な怒り方”も“上手な怒られ方”も、人それぞれであり、その時々だと思います。

昨日“怒り方”は難しいものだと書きましたが、“怒られ方”もまた難しいと思います。
 人生では、他者から怒られることは、数え切れないほどあると思います。
親や教師や上司など、立場が上の人から怒られたり叱られたりすることもあると思います。
同級生や、同期で同じ役職の同僚から、注意されたり怒られたりすることもあると思います。

怒られる場合、相手との関係や立場の違い、相手の“怒り方”など、その時々だと思います。
怒鳴り散らすように怒られる場合もあれば、ねちねちと嫌味を言われるときもあれば、くどくどと一から十まで説明されることもあれば、身体的特徴や出自などを罵られることもあると思います。暴力を振るわれることもあるかもしれません。

社会的、法的、に対処したほうがいい状況もあると思います。
またそのような状況ではないものの、どうしても耐えられない場合もあると思います。怒る人と怒られる人の間には、“相性”のようなものがあると感じることがあります。
 ただ、人生では無数に怒られることがあると思うと、“上手くさばく”ことも必要だという気がします。すなわち“上手に怒られる”ということです。

「すみませんでした」
「すみませんじゃねえよ! なんでこうなったんだ! 理由を言ってみろ!」
「ついうっかりっていうか、集中力が途切れたのだと思います」
「うっかりだと! お前やる気あるのか!」
「はい。決して怠けていたわけではありません。ただ同じ作業の繰り返しなので、どうしても……」
「いいわけするんじゃねえ! 大体おまえはいつもそうだろうが! いったい何回失敗すりゃ気が済むんだよ!」
「あの……。失敗したのは三年間で二回です。何百回か何千回かはちゃんとやっているんで……。いつもというわけでは……」
「口ごたえするんじゃねえ! てめえ反省してんのか!」
「反省しています」
「反省してますじゃねえ!」
「すみません」
「すみせんじゃねえ!」
「……」
「黙ってんじゃねえ! なんども失敗しやがるくせに、注意すればいいわけばかりしやがって! 俺はお前のためを思って厳しくしてんだよ! それを口ごたえしてんじゃねえよ! ちゃんと聞けよ!」

怒りの感情は発することで高ぶることがあると思います。怒っている人は、怒ることで、その怒りを高ぶらせることがあると思うのです。
そのことからも、“怒られ方”は難しく、“上手くさばく”ことが出来るのは稀かもしれません。とにかく何とかやり過ごすしかない場合もあると思います。
 
 それにしても、多くの状況であまり芳しくない“怒られ方”があると思います。
「私も悪いですけど、あなたやっているじゃないですか」
 この言い方は、“私も悪い”ということを認めいているようで、反省していると感じさせないことが多いと思います。
 むしろ開き直っていると受け取られたり、自分のことを棚に上げていると感じられたりするほうが多いと思います。
「俺も悪いが、お前だってやってるじゃねえか」とか「僕も悪いけど、父さんだってやっているじゃないか」とか「僕も悪いですけど、先生だって悪いんじゃないですか」とか「確かに私には落ち度がありましが、課長だってミスをしたじゃありませんか」などといって、状況が良くなることは少ないと感じます。
“怒られ方”としては、“よくない”といえるかもしれません。 

そしてそれは、交渉やマネジメントにも通じるような気がします。
交渉などでは、こちらを批判している相手が、同じことをやっていたのなら、それを効果的に使うべきで、「こっちも悪いが、そっちも悪い」という使い方は、効果が低いばかりか逆効果になることも多いと思います。

それは交渉に戦略性がなく、交渉力やマネジメント能力の低さを表すかもしれません。