2014年6月14日土曜日

小手先、ものまね、骨太

“まずは企業に儲けさせる。企業が儲からなければ、労働者の給料は上がらない”
“世界の企業をこの国に引き寄せる。そうすれば金も人もモノもついてくる”
“世界の富裕層をこの国に引き寄せる。それは金を引きよせることになる”
 
 これらは国の経済をよくする考え方だと思います。
 世界には実際にそのようなやり方をしている国があると聞きます。それもある程度の効果があるようです。
 何事も、実際に上手くいっている事例があると、それを真似しようというのはよくある考え方だと思います。
 新しいことをやるよりは、失敗する危険性が低いと思いますし、お手本があるのですから、やり方に迷うことは少ないような気がします。

 ただこうして並べて書いてみると感じることがあります。
 日本の企業の地力が弱まっているということです。
 企業に底力があれば、考えの方向が違っているかもしれません。
 
バブル崩壊以降、日本の景気の落ち込みは大きく、雰囲気の沈み込みは数字の何倍も大きかったと感じます。
その沈み込みが、さらに景気を悪くし、景気が悪くなることでさらに雰囲気が沈んでいったと思います。
 地力を振り絞って、勢いを取り戻そうという空気は湧きあがらなかったと思います。
  
それでも、とにかく空気をよくしようという声もあったと思います。
確かにまず雰囲気がよくなれば、それに引かれて後から“実”がついてくることもあると思います。
“雰囲気が沈んでいることが、数字の落ち込みに拍車をかけている”
多くの人が感じていたと思います。
 しかし、“空元気は空回りすることがある”ということも、多くの人が感じていたような
気がします。

『“実”があって空気が良くなるほうが理想だ。だが“実”を身に着けるには容易ではない。そこで、とにかく空気をよくする。そうすれば勢いがつき“実”を得ることが出来る』
『それはわかっている。わかっているが、温存していた最後の力を振り絞るなんて怖くて出来ない。それが出来ないことをわかっているから、まず空気をよくしようとしても、空回りすることをおそれてしまう』

 長い間、この国にはそんな雰囲気があったと思います。
 それが数年前、ようやく“とにかく雰囲気を良くしよう”という機運が高まってきた感があります。
 それは“いつまでもこのままではいけない”という意識が強くなったのかもしれません。
 そしてそれは、“このままでは本当に沈んでいくだけだ”という危機感や切迫感の表れといえるかもしれません。
 その危機感や切迫感や焦燥感は、日本企業の地力が弱まっていることの表れかもしれません。

“まずは企業に儲けさせる。企業が儲からなければ、労働者の給料は上がらない”
 そのような考えに基づいた経済対策は、前にもやっていると思います。
 何度も書いていますが、リーマンショック前にはそういう方向だったと思います。
 その結果、プラスもあったしマイナスもあったように見られます。
 
 リーマンショック前、企業の業績はよくなり、国の税収も上がったと思います。それは大きな“プラス”だと思います。
 しかし、多くの国民はそれを実感できなかったと思います。
つまり、数字はよくなったのに雰囲気はよくならなかったということです。
格差が広がったことも、空気がよくならなかった一因だと思います。
それは“マイナス”だったと思います。

 そしてリーマンショックによって、その“マイナス”が一気に大きくなったと感じます。
 数字がよくなったのに雰囲気がよくならなかった、その状況でリーマンショックがおきて数字が悪くなったのですから、雰囲気はさらに悪くなったと感じます。
 それがデフレの大きな要因でもあるような気がします。デフレはさらに景気を悪化させ、雰囲気をさらに沈み込ませたと感じます。
 それは、空元気を出す気にならないほど大きく落ち込ませたと感じます。

それが少し前、とにかく雰囲気をよくしよういう意識が感じられるようになった気がします。
“みんなで流れが来たと思いこもう。思いこんでその流れに乗ろう。みんなで思いこむことが必要だ。みんなで流れに乗ろうとすることが大切だ”
空元気を恐れる雰囲気が薄らいだといえるかもしれません。
ただ本来なら、底力を発揮することで、意識を高め、雰囲気を明るく、勢いをつけるのが王道だと思います。

近年、とにかく国民に自負心を掻き立てようとしている事柄を見聞きすることがありますが、本当に日本企業に底地からがあるなら、上に書いた三つとは違った考えに向かうかもしれません。
もし日本企業が地力をなくしているのなら、まずそれを身に着ける方向を探るべきかもしれません。
それには、まず日本企業が地力をつけようという意識をもたなければならないのかもしれません。

 それこそが“骨太”ではないかと感じます。