2014年6月26日木曜日

「第三の男」 キャロル・リード監督作品

 映画「第三の男」について、ここでは何回も取り上げているような気がします。
 1965年前に製作された映画史に残る名作だと思います。
先日、映画館でこの名画を観る機会がありました。
 
「午前十時の映画祭」についても、ここでは何回か書いています。
 一年間、週替わりで名画を上映する企画です。毎日午前十時から一回、過去の名作映画を上映することから「午前十時の映画祭」と名付けられたようです。
全国のシネコンで行われ、ある程度の人気を得ていたようですが、映画館の機器がデジタルに変わったため、フィルムの名画を上映できるシネコンは少なくなったようです。

それが「新・午前十時の映画祭 デジタルで蘇る永遠の名作」と銘打ってデジタル化した名画を上映する内容になりました。今年で「第二回 新・午前十時の映画祭」が行われています。
この企画では、一つの作品の上映期間は二週間になっています。

そこで「第三の男」が上映されたのです。
この作品は「午前十時の映画祭」の時にも取り上げられていました。押しも押されもせぬ名作映画ですので、順当というか当然だと感じたものです。
 しかしその時には映画館に足を運ぶ機会がありませんでした。
ただ「第三の男」は名作であり、「第二回 新・午前十時の映画祭」でも上映作品に加えられています。
先日、それを観る機会がありました。

その時、ふと『この作品をスクリーンで観たことがあったっけ』という思いが浮かんできました。
僕が若いころにも、名画を上映する企画がありました。「午前十時の映画祭」のような大きな規模の企画ではなかったような気がしますが、過去の名作を劇場で上映していたと思います。
 また、そのような企画ではないものの、名画を再上映することがあったような気がします。
 その時にはよく観に行っていたものです。テレビ放送で見て気に入った名画を、スクリーンで観られることを喜んでいた覚えがあります。

 そのため、「午前十時の映画祭」で取り上げられている作品のなかには、以前スクリーンで観たことがある作品もあります。
「明日に向かって撃て」は、テレビ放送でも、VHSビデオでも、映画館でも、複数回見ています。
「第三の男」はVHSビデオでは何回も見ているのですが、映画館で観たことに関して記憶が定かではないのです。
 もしかしたらVHSビデオで見ている回数があまりにも多いので、劇場で観た記憶が薄らいだのかもしれません。
 今回、久しぶりに映画館で観たのかもしれませんし、スクリーンで観るのは初めてかもしれません。
どちらにせよ、やはり映画史に残る作品だと思います。

“筋運び”という点でみるとミステリー性はそれほど強くないのですが、映像を作り込むことでその雰囲気を醸し出していると感じます。
“映像を作りこむ”ことは映画という表現法において、非常に重要なことだと思います。
 凝った映像が必ずしも映画を良くするとは限らないと思いますが、「第三の男」は映像表現の巧みさが、この映画を名画たらしめている大きな要素だと感じます。

特に夜の場面では、映画的な表現が多用されていると感じます。 
それは後の映画にも大きな影響を与えたような気がします。
また終戦後のウィーンの街や、地下下水道は立体化や奥行を感じさせ、映像で表現するにはとてもいい舞台になっている感があります。

またこの作品は音楽がとても個性的だと思います。主題曲は有名で、近ごろはビールを連想する人が多いかもしれません。
僕は音楽について全般的に詳しくないのですが、この映画ではオーケストラのように多くの楽器を使った曲はほとんどないと思います。主題曲はチターという楽器が主に使われ、その音色がとても印象的です。
BGMもそのような曲が多く、それが作品の雰囲気つくりにも貢献していると思います。

ところで「カサブランカ」をはじめてみたとき、歴史的な背景がわからなかったことで、導入部で映画に入り込めないと感じたことがあります。
説明はされているのですが、あっさりしているというか、理解できないまま映画が進んでいったと感じていたのです。
二回目にみたとき、それらがわかっているため、すぐに映画に引き込まれたような気がします。

「第三の男」は、はじめてみたときの記録がないのですが、もしかしたら同じように感じたかもしれません。
ただ歴史的背景がわからなくても、この映画は堪能できると思います。そのため、あまく詳しく説明されていないような印象を受けます。
もし、映像や雰囲気の古さや、歴史的背景がわからないことで、映画に入り込めないと感じたときは、後でもう一度みてみるといいかもしれません。一回目よりいい印象を抱くかもしれません。

それに、名画は何度みても、その度になにかを感じるものだと思います。