2014年6月3日火曜日

「3分間待つのだぞ」

 いつだったか、レトルト食品は日本で生まれと耳にしたことがあります。
 日本の食品メーカーがつくったカレーが、世界初のレトルト食品だということだったと思います。
そのレトルトカレーは、子供のころからテレビCMを見ていますし、今までに数え切れないほど食べています。

 それが“世界初”だと聞くとなんとなくうれしいような気がするのですが、詳しいことは忘れてしまいした。なにか勘違いをしているかもしれないので、そのレトルトカレーを製造販売している食品メーカーのウェブサイトを見てみました。
 それによるとそのレトルトカレーは、昨年、発売45周年だったそうです。
 それが話題になったとき“世界初のレトルト食品”ということも取り上げられたのかもしれません。
 
 今年で46年目ということになりますが、味や賞味期限などは改良されつづけ、商品の種類も増えているようです。
 子供のころからテレビCMで見聞きしているためか、その商品名には親しみのようなものを感じます。
レトルトカレーの代名詞として、この商品名が広く使われていた時代があったような気がします。

小学生のころ、学校の給食にこのレトルトカレーが出されたことがあります。もう何十年も前のことですので、記憶が薄らいでいるのですが、他のおかずはなく、ごはんとレトルトカレーだけの給食があったのです。
 児童はみな、明らかにいつもの給食とは違うと感じながらも、だれも苦情をいうこともなかったと記憶しています。
おそらくあの日の給食は、何かの手違いや不意の出来事があったのか、なんらかの問題が発生したのだろうと思います。今だったらそれなりに騒がれたかもしれませんが、あの時はそうはならなかったような気がします。

翌日からは普段通りの給食でしたし、子供たちはあのレトルトカレーが出たことを喜んでいたような気がします。
僕自身、子供のころはレトルトカレーを“ごちそう”だと感じていました。発売された当初、一食分のレトルトカレーは、大きな鍋で作り置きして何日か掛けて食べるカレーよりも割高だと感じられた気がします。

今ではレトルトカレーには手ごろで手軽な食べ物というイメージがありますが、僕が子供のころは、3分間あたためるだけで食べられるという利便性が付加価値になっている高価な食べ物という印象があったのです。

「3分間待つのだぞ」
 これはレトルトカレーのCMで使われていた言葉です。レトルトカレーという商品自体に関心がありましたが、CMも人気時代劇を面白く模したもので、とても印象的だったように思います。
 なかでもこの言葉は頭の中に残りやすく、流行語になっていたような気がします。
そしてレトルトカレーを食べるときは、この言いつけどおり3分間じっと待っていたものです。
その時、時計と湯の中のレトルトパックを交互に見ながら、なんとなくわくわくしていたような気がします。

そういえば子供のころは、カップ麺を食べるとき、ちゃんと時計をみていた覚えがあります。秒単位まで正確に計っていたわけではありませんが、3分間、待ってから食べていました。
しかしいつごろからか、時間は一切気にしなくなりました。大抵はカップ麺に表示されている時間より、大分短い時間しか待たないと思います。
時計を全く見ないので確かではありませんが、おそらくお湯を注いでから1分以内にふたを開けているような気がします。
まだ麺がかたくて、かき混ぜてもほぐれにくいのですが、個人的にそのくらいのかたさが好きなのです。

元々カップ麺はかためが好きなのです。それに食べているうちに、どんどん麺が柔らかくなっています。
“大盛り”と謳われたサイズのカップ麺ですと、食べ始めたときの麺はかたくても、残りが半分を切るころには、随分とやわらかくなっているものです。
そのため“かたすぎる”と感じるころから食べ始めるようになったのかもしれません。自覚しないまま、どんどん待つ時間が短くなったような気がします。
 
 そういえば以前、職場の後輩が、カップ麺にお湯を注いでから10分以上待って食べ始めていました。麺が伸びきっているように見えるのですが、本人曰くそのくらいが一番おいしいそうです。
 彼も時計は一切見ていなかったと思います。
 食べ物の好き嫌いは人それぞれです。
 
 カップ麺が世に出たころは麺のかたさの好みなど自分でもわかりませんし、「3分待ってから」と表示してあるからには、その通りにしないと本来の状態にならないと受け止めていたような気がします。
 そのため、いつもしっかり3分間まっていたと思うのです。

 それが慣れてくるに従って、『そんなにきっちり守らなくてもいいのかな』と思うようになり、『かための麺が好きだから、待ち時間は短い方がいいや』となったのだと思います。