2014年7月15日火曜日

大人の趣味

『プラモデルを趣味に出来たらいいな』
 子供のころ、本格的にプラモデルを楽しむことに憧れていました。市販のキットを設計図通りに組み立てるだけでなく、高度な技術を駆使して見栄えを良くしたり、改造したりしたかったのです。
 いつかそのようになれたらいいな、と思っていたのですが、実現することはありませんでした。

小学生のころスーパーカーの楽しみ方の一つとして、僕はプラモデルを作るようになったのだと思います。あのころは完成してから遊ぶことが目的となっていて、“作ること”はそのための過程だった感があります。
 ただそれでも、プラモデルに触れているうちに、“作ること”にも関心が湧き始めていました。
“作ること”それ自体にも、楽しみがありそうだと感じていたのです。

 子供のころ親戚のお兄さんが、戦車や歩兵などのプラモデルを作っていて、それを見せてもらったとき、『こういうのが趣味っていうんだろうな』と感じた覚えがあります。
 僕はスーパーカーに凝っていたのですが、それを“趣味”とはいえないような気がしたのです。
 それに比べて、親戚のお兄さんはプラモデルに凝っていて、そしてそれは明らかに趣味だと感じたものです。

 それが影響したのか、スーパーカーではない自動車のプラモデルを買ったことがあります。当時の僕から見ると地味な国産車で、24分の1スケールでもモーターが付属しておらず、エンジンや運転席が精密に再現されているプラモデルでした。
もう随分前のことですので、記憶が薄らいでいますが、小さな模型専門店で購入したのだと思います。

結局、あのプラモデルは完成させられませんでした。
24分の1で、エンジンや足回りまで再現されていると、部品が小さく、工程が多く、小学生の僕では、組み立てがとても難しかったのです。
また、かっこいいスーパーカーではなく、地味な国産車ということもあって、製作意欲を持続させられなかったような気がします。

そして中学生の時、ガンダムブームが巻き起こりました。何度も書いているような気がしますが、僕もその流れに乗りました。
ガンダムの楽しみ方の一つとして、プラモデルを集めたものです。当然、組み立てたのですが、当時のキットにはないかと不満がありました。
プラモデルの雑誌を立ち読みして、高度な技術で不満を解消したり、さらにかっこよく改造したりした完成品の写真を眺めていたものです。
『こんなふうに作ることが出来たら楽しいだろうな』と思ったのですが、それには道具や部材や塗料などが必要ですし、技術を高めるにはある程度の数をこなさなければならないと思います。
キットを買うだけでもお金がかかることもあって、憧れていただけでした。

「このメーカーのキットはあんまり良くないんだ。部品が細かくてさ」
「部品が細かいなら、リアルでいいんじゃないの?」
「いやそうじゃないんだ。細かい部分は小さい部品で組み立てるより、精密な一つ部品に成型してあるほうが、完成したときの見栄えがいいんだ」
 高校生のころ、戦艦や戦闘機などのプラモデルを趣味にしていた友人と、こんな会話を交わしたことがあります。
 当時プラモデルに関心はあるものの、遠ざかっていた僕は「へえ、そういうものなんだ」と思っていました。
それが数年後、この言葉を思い出しました。

 成人したころ、24分の1のミニクーパーのプラモデルを作ったときです。このキットはエンジンや操舵系、運転席が精密に再現されていました。しかし子供のころ組み立てられなかった自動車のプラモデルとは、随分と違っていたのです。
細かい部分が一つの部品に成型されていて、とても組み立てやすいと感じました。
 このミニクーパーを作ったのは、もう二十年以上前だったと思いますが、今でも部屋に飾ってあります。さほど上手く出来たわけではないのですが、キットの部品一つ一つが精巧に作れているため、それなりに綺麗に見えるからです。

 近年、中高年から高齢の男性がプラモデルを楽しんでいるそうです。
 器具などをそろえた“プラモデル工作スペース”を、時間単位で貸すサービスなどもあると聞きます。
 またプラモデル製作に関する教室があるようですし、展示会など愛好者による集まりや催しが増えているようです。
 
 この年代がプラモデルに凝ってきているのは、キットが良くなっていることが理由の一つとのことです。
 成型が精巧で、組み立てやすく、完成すると見栄えがいい、最近のキットはそうなっているため、久しぶりに作っても楽しめるのだろうと思います。
かつて高度な技術を駆使してプラモデルを作っていた人も、昔はただ組み立てるだけで高度な技術に憧れていた人も、今のキットは楽しめるような気がします。

 僕も今のプラモデルをつくってみたいのですが、趣味に打ち込むには時間と心とお金の余裕が必要だと思います。もう少し先になりそうです。