2014年8月17日日曜日

自分に対して誇れるように

「日本は治安がいい国だ」
よく耳にする言葉です。世界から褒められているような気がします。褒められることは心地いいものだと思います。
そして誇らしく感じるものだと思います。
 
僕は外国のことはわかりませんが、日本人は褒められることが好きだと感じています。
 日本人は他者から、自分がどのように見られているかを気にする心理が強く、そのため
褒められたり、讃えられたりすることに、喜びを感じる傾向があると思うのです。

 そして日本人は、褒められたり、讃えられたりすると、その点をさらに高めよういう心理が働きやすいように感じられます。
「治安がいい」という言葉に対しても、そのような傾向があるような気がします。
 しかし、『今よりもっと治安を良くしよう』というのではないような気がします。
『今の治安の良さを維持しよう』という意識を感じます。

 日本の治安が悪化していることを、多くの日本人が感じ取っているからかもしれません。
 そして多くの日本人が、それは仕方ないことだと認識し、『治安の悪化を食い止めることは出来ない』漠然とですが、そう受け止めているからかもしれません。

 統計などを調べたわけではありませんが、日本の治安は悪化していると感じます。
連日のように、凶悪な犯罪が報じられているような気がします。
『こんな事件は、滅多に起きるものではない』そんなことが、高い頻度で発生しているような感覚があるのです。

 さらに連日のように、詐欺事件が報じられています。これだけ世間で騒がれているのだから、被害に会う人は少なくなるのではないかと、数年前から考えていましたが、実際には増え続けてきたようです。
 それだけ巧妙なのだろうと思います。また犯行の手口も色々と変えてきていると聞きます。

そして、多くの人が無自覚のまま、犯罪が増えること、犯罪が凶悪化していること、それに慣れているように感じます。
『治安が悪化するのは避けられない。せめて今の治安の良さを維持しよう』
『治安が悪くなるのは仕方ない。せめて悪化する速度を遅くしよう』

ここ数日、日本は万引きに関する話題を頻繁に見聞きします。
そのなかの一つに、日本は万引きが非常に多いというものがあります。他国と比較したものは耳にしていませんが、日本は万引きの発生件数が多く、被害額も大きいと聞きます。
当たり前のことですが、万引きは犯罪です。
万引きの発生件数が多いということは、犯罪の発生件数が多いということになります。

そのことから考えると、“日本の治安がいい”のは、日本人に善悪の観念がしっかりしているからではないという気がしてきます。
『悪いことはやってはいけない』
日本人はそういう気持ちが強いため、治安がいいと見る向きもあると思います。
それは間違いでないような気もします。

しかしそれ以上に、悪事の大小に対する認識が強いのかもしれません。
大きな悪事は行うには抵抗感があるものの、小さな悪事を行っても罪悪感を抱かないのかもしれません。
『日本人は悪いことをしない』のではなく『日本人は大きな悪いことをしない』のかもしれません。

『日本は本当にそんなに治安がいいのだろうか?』
他の国の治安が悪すぎるのかもしれません。
そうだとすれば、その国に対してなら誇れるかもしれません。
他人に対して誇れるということです。
しかし本当に目指すべきは、自らに対して誇れるようになることだと思います。

『やろうと思えば、見つからないようにやれる。たとえ見つかったって、小さいことだから、謝ればそれで済む』
 僕自身、そんなことを考えないわけではありません。
 今までの人生を振り返ると、刑務所に入るようなことはしていませんが、倫理に反することや、道徳に背くことや、社会通念上悪いことなど、色々やってきたと思います。
他者に迷惑をかけながら、忘れていることもあると思います。
 
『大きい悪事をしないのなら、小さい悪事に目くじら立てなくてもいいじゃないか』
こうして書いていると、そうではないような気がしてきます。
誰だって聖人君子にはなれないと思います。
しかしだからといって、開き直ってしまうと、日本の治安は確実に悪くなり続けていくような気がします。
善悪に関する意識を高め、それを持ち続けようとする意思が必要だと感じるのです。

『ことが悪いことならば“やれる”か“やれない”かは、問題とするべきでない』
『ことが悪いことならば“大きい”か“小さい”かは、関係ない』
『やれようが、小さかろうが、悪いことはやってはならない』
『やろう思えば出来ることでも、悪いことはしない。小さなことでも、悪いことはしない』
『そういう意識をもつことが大切だ』

 それは他国の目を気にした誇りではなく、自分自身に対する誇りといえるような気がします。
そしてその誇りが、真に日本の治安をよくするような気がします。

治安の悪化を遅くするのではなく、今よりもっと治安がよくなるということです。