2014年8月18日月曜日

思惑通りではない

消費税の税率が上がった後、経済が一時的に落ち込むことは、容易に予想されることだと思います。実際に過去の増税でも見られていることです。
今年、消費税が8%になった後も、経済の数値は低くなったと聞きます。
 その数値が大きいという声も聞かれます。
 それに対して想定の範囲内という発言も耳にします。
 
 確かに、この数値の落ち込みは想定の範囲に収まっていると思います。
 ただ、期待値よりは随分と低いと感じます。
 落ち込みの想定を広くしていた印象があるのです。
それは今の社会が、経済の状況を予測しにくいことが理由の一つだと思います。
 予想することが難しいため、あらかじめ幅を持たせているということです。

 経済の今後を予測することは、かねてからとても難しいことだと思います。それが簡単に出来れば誰も苦労しないような気がします。
しかしそれにしても、近年“経済の先の読みにくさ”は拍車がかかっていると感じます。
 そんななかで景気対策を講じつつ、増税をするのですから、予想にはある程の幅を持たせなければならないと思います。
 そしてとりあえず、その範囲には収まる落ち込みだったということだと感じます。
 
 しかし想定に幅があるのですから、それに収まっていたからといっても、落ち込みが大きいことは確かだと思います。
 増税後に経済が落ち込むことは、わかっていたのですから、対策を講じていたと思います。
 今回の数値は『対策を講じたのに、ここまで落ちたか』という印象があります。

 では対策が不十分だったのかというと、そうではないと思います。投じたお金は十分といえる額だったと思います。
 お金をつぎ込んでいたのですから、増税後の落ち込みは小さくて済むことを期待するものだと思います。
 しかし先日の数字をみると、期待値より随分と低い数字だと感じられます。

 そこから、景気の回復が思惑通りに進んでいないことが窺えます。
 ただそれを声高にいうには、憚られるものがあります。景気は心理に影響を受けますので、景気対策が上手くいっていないという声が高まると、それが雰囲気を沈ませ、経済を押しさげることもあり得ると思うからです。
 それもあって、政治家や経済界から悲観的な意見は発せられていないのだと感じます。
 これから景気を本格的に回復させなければならないとなると、勢いをそぐことは避けたいものだと思います。

 それにしても分析は必要だと思いますし、増税後の落ち込みについても、いくつかの指摘が耳に入ってきます。
 やはり個人消費が伸び悩んでいることが、理由の一つだと見られているようです。
 そして個人消費が伸び悩んでいるのは、給料の上がり方が、物価の上がり方に追いついていないからだと指摘されています。
 
それには様々な要因があると思われます。ただ首相の名をもじった景気対策の基本的な方向性は、そうなりやすいものだと思います。
その基本的な方向性とは、“まず企業を儲からせれば、やがて給料があがる”という考え方だと思います。
リーマンショック前、同じ考え方の策が施されていたと思います。
あの時は“いざなぎ越え”という歴史的な長期経済成長をしたものの、“景気”は悪いままで、むしろリーマンショックの打撃を大きくしたように見えます。デフレの原因だったと感じられるのです。

 今回、まず企業を儲からせるためには、売り物の値段をあげることは一つの“手”だと思います。
 実際、売り物の値段が下がり続けるデフレは、不景気の原因でもあり、結果でもあったと思います。
 そうなるとその反対のこと、つまり物価を上げることは対策になると思います。
 しかし物価が高くなったため、買い物をしなくなったのでは、売り上げはあがらないと思います。
 
 結局、現状もリーマンショック前と同じように、企業にオイシイ思いをさせたものの、働くものにまでそれがまわっていないような気がします。
 いくらかは給料が上がったので、それで雰囲気を良くしようと狙ったものの、実際に財布を開くと、その中身が思いのほか増えていないことに気づき、そこからお金を出すことをやめている人が多いのかもしれません。

考えてみれば、リーマンショック前と同じ考え方の景気対策を施しているのですから、同じような形で表れるのも無理はないと思います。
企業にオイシイ思いをさせても、思惑通りに景気が良くならないのは、企業の地力が落ちているからだと感じます。

円安になっても輸出が伸びないのは、その表れだと思います。
企業が海外に生産拠点をもつようになっているため、円安にしても狙い通りの効果はないだろうという指摘は、首相の名をもじった景気対策を打つ前、前回の総選挙の時から指摘されていたと思います。
それでも「この道しかない」と言ったのは、円安になれば輸出が伸び、企業が儲かるという“読み”があったのだと思います。
 その“読み”通りにはなっていないと思います。