2014年8月19日火曜日

私が決断します

今年の年末までに、消費税を10%にするか最終的な判断を、首相が下すそうです。
 以前書いたことがあるような気がしますが、今の日本に、消費税税率引き上げを先送りする選択肢など端からないと思います。

 消費税を8%に引き上げた後の、経済の落ち込みは想定の範囲内だと思います。
 しかし期待していた数字よりは相当に低いと思います。
 増税後の経済の落ち込みをやわらげるために、かなりの額のお金を対策につぎ込んだと思います。
 それにも関わらず、期待値を大きく下回ったと見られます。

 それは対策が失敗だったというより、やはり景気回復が十分ではないと見られます。
「この道しかない」という“道”は『まずは企業を儲からせれば、いずれ働く者の暮しが良くなる』という考え方だと思います。
それはリーマンショック前と同じ方向性だと思います。
 しかしリーマンショック前は、記録的な経済成長をしながら、景気は悪いままだったと思います。
そしてリーマンショック後、その影響を必要以上に大きくし、デフレが長引いた要因の一つになったと思います。

 少し前に、雇用の流動化を促進するために、解雇規制を緩和する政策が打ち出されていました。仮にそれが実施されていたら、今の景気は良くなっていただろうか考えてみます。
むしろ悪くなっていたかもしれません。
 
 そんななか、これからの経済状況をみて、消費税の税率を10%にあげる最終的な判断を、首相が下すことになっています。
 しかし、もし経済に関する数字が良くなかったとしても、消費税の増税を先送りすることは、日本にとって大きな打撃になりかねないと思います。
 
日本の財政は、毎年非常に大きな借金を重ねているような気がします。
それでも国債の信用が高いのは、日本には世界第三位の経済力があるからだと思います。
しかし、経済の数字が良くないことを理由に、消費税の引き上げを延期したのでは、経済力の衰えを世界中に示してしまうことになりそうな気がします。
経済力が衰えたと示してしまうと、積み上がった国債の信用を落としてしまうことになると思います。

元来、金融市場は予測が難しいものですが、近年それが急速に強まっていると感じます。
 また現在の金融市場は、振れ幅が極端に大きくなる傾向があるような気がします。
「消費税の増税を少しだけ延期します」としたら、“国債の信用が少しだけ下がる”かというと、それだけでは済まないことも十分にあり得ると思います。
 日本国債が大暴落するかもしれません。
 予測が難しいということは、そうなる危険性を排除できないということになると思います。

 日本国債大暴落の危険性を背負って、消費税の引き上げを先送りすることは出来ないと思います。
 また消費税の増税を先送りしたからといって、その先に経済の数値がよくなる保証はありません。
国債暴落という最悪の事態にならないとしても、増税を先おくりすることで『日本の経済力は、思いのほか弱くなっている』というイメージを世界中に与え、それが日本経済の足を引っ張ることもあり得ると思います。
その危険性を背負って、消費税の増税を延期することは賢明ではないと思います。

8%にあげるときから、増税を中止する選択肢も、延期する選択肢も、なかったと思います。
 選択肢がないにも関わらず、首相は「私が決断します」という形にしたと見えます。
 しかも、10%にあげるときに再び「私が決断します」ということにしていると思います。
 それは二段階で引き上げる効果を半減させたかもしれません。
 8%に上がった時点で、翌年10%になることが確定していれば、一回目の増税の反動減は、今より小さかったかもしれません。

 さらに『もしかしたら10%の引き上げは先おくりになるかもしれない』という意識が、消費者にあると、二回目の増税の反動がより大きくなる可能性があると思います。
 消費税の税率を上げる政策の進め方としては、8%に上げるとき、10%にあげるとき、その都度首相が「私が決断します」という形にしたのは失敗だと思います。
『消費税は二段階で10%にあげることが決定しており、よほどのことあった場合のみ変更する』そういう進め方をしたほうがよかったと思います。

 また、政治的な戦略性からみても、8%に上げるときも、10%にあげるときも、首相が「私が決断します」という形にしたのは失敗だと思います。
『増税を決めたのは他の人』で、『増税の影響をやわらげる対策を講じるのは私』としたほうが、“増税する”という一つしか選択肢のない決断を「私がします」というより戦略的だったと思います。

 これはいかにも、“権力が大好きな人”が陥りそうな失敗なのかもしれません。
“権力が大好きな人”のなかには、権限を自分に集中させたがる人がいるような気がします。

 それは必ずしも賢いやり方ではないと思いますが、“権力が大好きな人”のなかには、それに気づかない人もいるような気がします。