2014年9月2日火曜日

紙の利点

 以前、カタログを眺めることが好きだと書いたことがあります。
 購入する商品を選ぶ、生産者や販売店の品ぞろえを知る、それがカタログの本来の使い方だと思います。
 また今すぐに購入する意思がなくても、自分が好きなものや興味があるもののカタログをみて、そこに載っている商品を手にしたときのことを想像して楽しむ人もいると思います。
 その場合、現在販売されている商品が掲載されたカタログを見るものです。
 僕もそうします。ただ、すでに商品が販売されていなかったり、すでにメーカーがなくなったりしているカタログをめくることも、僕は好きなのです。
 
近年カタログは、インターネットで発せられることが増えたため、紙で作られたものは少なくなる一方だと感じます。
 僕もインターネットで商品を購入することがあります。ショッピングサイトはカタログの役割を果たしていると思います。品揃え、商品の写真、商品の説明、価格が掲載されており、何回かクリックするだけで簡単に買うことが出来ます。
 
 そのように買い物をするサイトではなく、カタログだけをインターネットで公開しているメーカーや販売店もあります。
 カタログの本来の目的である、品ぞろえや商品を告知し販売につなげるのであれば、インターネットは有効だと思います。
 
 ただ僕のように、昔のカタログを眺めて楽しむことは、インターネットで配信されたカタログでは出来ません。
 昔のカタログは消えてしまうからです。

 常に新しい情報を発信できることは、インターネットの利点だと思います。
 ショッピングサイトで、『欲しい』と思った商品があったとき、よく見ると「売り切れ」と表示されていることがあります。
 売り切れた商品をあえて消さないことが、商売に役立つ場合があると思います。
 ただあまり売り切れが多いと、商品が選びにくいと感じたり、購買意欲を削いだりするものです。
 そのためインターネットショップでは、ある程度の期間は売り切れた商品を掲載することはあるものの、原則的として常に新しい情報を提供するものだと思います。

 インターネットのカタログは一年間など一定期間ごとに新しくなり、古いものは次々に消えてしまいます。
 古いカタログを眺める楽しみは出来ないものです。
 紙のカタログは、残しておけばいつでも見られます。
 
そのようなことを考えると、物体として存在するのは、紙媒体の利点だという気がします。
僕は古いカタログだけでなく、昔の雑誌を眺めることも好きです。当時の世相を振り返ったり、なつかしんだりすることもありますが、深く考えずにただ眺めるだけでも楽しいのです。
 また、僕はかつて読んだ本を、読み返すことがあります。それも読書の楽しみ方の一つだと思っています。中には今までに何回読んだかわからなくなっている小説があります。

 カタログにしろ、雑誌にしろ、小説にしろ、何度も見たり読んだりするのは、その物体が存在していることが理由の一つだと感じます。
 僕は本にカバーをかけていますので題名は見えないのですが、自分の部屋にいる間は、本という物体が何度となく視界に入ります。
 無意識である場合も多いと思いますが、本という物体が存在し、それが目に入ることで、本を読みたくなる心理を呼び起こすことがあるような気がします。

 また古いカタログや雑誌は、手もとにあるから眺めたくなるような気がします。
 もし昔のカタログや雑誌を残しておかなかったら、特段の理由がないにも関わらず、眺めようという気は起きないような気がするのです。
 それに紙媒体は、それだけあれば読むことが出来ます。読むために機器を必要としないのです。

デジタル媒体で保存したデータを見るには、パソコンなどそのための機器が不可欠です。
ただデータだけを効率よく保存できるのは、デジタル媒体の利点だと思います。
データだけが必要な場合、物体は余計なものかもしれません。
データだけを保存し、不必要になれば簡単に消すことが出来るデジタル媒体は、効率的だと思います。

しかし僕は、CD-RやDVD-Rに保存したデータをいつくも消してしまいました。帳簿など紙に印刷しておいたものは、すべて残っています。
僕がパソコンに詳しくないことが大きな理由だと思います。詳しくないのですから、僕はデジタル媒体に対してあまりいい印象をもっていません。

紙は燃えますし、やぶれます。水にぬれると格段にもろくなります。
それに紙で多くの記録を長期間保存すると、かさばりますし重くなります。
それでも僕の場合、デジタル媒体のデータより、紙媒体のほうが記録を残すことが出来ています。

データを効率的に保存するにはデジタル媒体は有効だと思います。
たたデジタル媒体にはない利点が、紙媒体にあることは確かだと思います。
 その利点はデジタル媒体のもつ効率性からすれば、情緒的かもしれません。しかしそれは、デジタル媒体では感じにくいことだと思います。

 そして情緒的な利点は、人間にとって必要なものだと思います。