2014年9月30日火曜日

国民をたぶらかすもの

『生活必需品の税率を低くする。それは立て前に過ぎない。国家戦略として、特定の業界の税負担を軽くして優遇する制度が軽減税率であり、新聞業界はその優遇される業界である』
 日本新聞販売協会は、そのような趣旨だと読み取れる主張をしています。
 そして政治家の大先生様と、この国の指導的立場にある人たちが、新聞業界を優遇することを願っていると主張しているように見られます。

“逆進性の対策”と“税負担感の軽減”と“導入している国が多い”
 軽減税率の導入理由として、主にあげられるのはこの三点です。
 どれも理由として、全く成り立たないわけではないと思います。
 しかしどれも、それほど強い根拠にはならないと思います。

“逆進性の対策”については、軽減税率では効果が小さいと思います。
 その割には、いくつかの難しい問題点があると思います。
対象品目の選定が難しいこともその一つです。そこで揉めたり、混乱があったりすることは、軽減税率を導入している国の多くで見られていることだと聞きます。
また、消費者にとって商品の価格がわかりにくくなるということもあります。
それに、商店・企業の事務処理や販売関連実務が煩雑になるということもあります。

そもそも軽減税率は、消費税という税制度の本質的な理念に矛盾すると思います。
逆進性があることを前提とした税制度であるがゆえに、安定した財源になる、それが消費税の大きな利点の一つだと思います。
そのため低所得者の税負担の軽減は必要だと思いますが、軽減税率はあまにも安直な発想だと感じられます。

それなのに軽減税率を導入している国が多いのは、冒頭に書いたことが理由だと思います。
つまり“生活必需品の税率を低くする”それは建て前にすぎず、軽減税率の実態はマスコミ対策ということです。増税に対する批判、政府に対する批判、などを抑えることになるからだと思います。
 それは公然たる認識だと感じます。
 しかし誰もそれを口に出さなかったと感じます。

 口に出したとしても、マスコミが発信しなければ広がりません。
 それに有名な有識者は何かとマスコミと繋がりがあるでしょうし、出版物を出している人も多いでしょうから、「軽減税率が逆進性対策だというのは建て前にすぎず、本当の導入理由はマスコミを優遇するためだ」と声を出すわけにはいかないと思います。
 マスコミから有識者に対して、そのような発言をしないように要請することもあると思います。
仮に良識ある有識者が発言したとしても、マスコミは発信しないと思います。
そのため軽減税率の問題点を指摘する場合、対象品目選定の難しさや、それによる混乱ばかりが取り上げられるのだと思います。

 ただ、政治家にも国民にもマスコミ対策は必要だという認識があると思います。
『新聞業界を優遇するのが、軽減税率の本当の理由だって? そんなことはみんなとっくにわかっているさ。わかっているけど黙っているのさ。マスコミ対策は必要だからね。まあ仕方ないんじゃないの』
 多くの人にそんな意識があると感じます。
 そのため多くの国が軽減税率を導入し、そのほとんどが新聞を対象にしているのだと思います。
 そして軽減税率は一度導入してしまうと廃止することが非常に難しいこともあって、ずっと続けられているのだと思います。
 
 しかし特定の業界を優遇する税制度は、国民にとって“いいこと”ではないと思います。
 また情報伝達法は、大きく変貌していると思います。それは新聞のみならず、マスコミのあり方に対して、直接的に大きな影響を及ぼしていると思います。
 新聞がマスコミのなかでも大きな役割を果たしていた時代の発想である軽減税率など、これからの社会にはあわなくなるばかりだと思います。
そんな軽減税率を、これから初めて導入するべきではないと思います。

 また税金全体として見れば、軽減税率は国民の税負担の軽減にはならないと思います。
 軽減税率を導入すると、国の税収が低くなります。
 ではその財源をどうするのかという話になります。
 税以外でその財源が捻出できるのではあれば、消費税の税率の上げ幅を小さくすればいいと思います。
 財源がないとなると、結局、税金として国民から集めるしかないと思います。
 つまり軽減税率と導入しても、国民が納める税金の額が安くなるわけではないと思います。

 公明党は消費税の税率を10%に引き上がる際「国民の理解を得るために軽減税率の導入をお願いしたい」と言っているそうです。
 公明党は軽減税率を導入したほうが、増税に対する理解が得られると認識しているようです。

少し前に公明党は、「軽減税率を導入するには、国民に丁寧に説明して理解を得る必要がある」という趣旨の発言をしていたと思います。
それは理解を得なければ、軽減税率を導入することが難しいという意味に聞こえます。
そうなると、増税の理解を得るために軽減税率が必要で、軽減税率を導入するために国民の理解が必要で、国民の理解を得るために丁寧な説明が必要だ、ということになると思います。

 しかし軽減税率を導入しても、国民から集める税の額を低くするわけではないと思います。つまり税金の負担が軽くなるわけではないということです。
 そうなると、“軽減税率の導入で、国民から増税の理解を得る”ということは、国民をたぶらかしていると感じることがあります。
 
また公明党が、軽減税率導入の理解が得られるように丁寧に説明している意見を、今のところ僕は見聞きしていません。

軽減税率に関しては、“公明党は国民をたぶらかす政党である”といえるかもしれません。