2014年9月22日月曜日

伝聞が育てた怪物

 噂話とは、実際よりも強調されることが多いと思います。
また、実際にはないことが付け加えられることもあると思います。
その分を差し引いて、噂話を聞くこともあると思います。
はじめから疑わしい話はあるものです。
ただ、はじめは疑わしいと思った話が実は本当だったということも、それほど稀ではないような気がします。

また、疑わしいなどと一切感じられない話が、実は大げさだったり創作が含まれていたりする場合もあると思います。
そして、そんな疑わしさの一切ない話が、事実のままだということもあると思います。

ただ人間は、事実のまま伝わる話を聞いても、自分の中でそのイメージを膨らませることがあると思います。
それは自覚していないことが多いと思います。
 例えば、新機種のスマートフォンに対して、『高性能』というイメージを無意識に少し割り増ししているというようなことです。

 実際に機能が良くなっているのですから、高性能なのは間違いないのですが、『新しいものは良くなっている』という先入観などから、好意的な印象が割り増しされていると感じられるのです。
 そしてそのようにイメージが割り増しされることは、あらゆる状況で見られる人間の心理のひとつだと思います。

強い勢力だと聞いたとき、また残虐な集団だと耳にしたとき、人は『危険だ』というイメージを抱くものだと思います。
その『危険だ』というイメージは、割り増しされやすいと思います。
また割り増しされる幅が大きいと思います。
 それは人間が生物として命を守るために備わっている心理かもしれません。

 過激派武装勢力は、急速に勢力を広げたと見えます。
元々、大きな武装勢力から別れたのですから、戦いの経験もあり、戦闘に関する練度も高かったと思われます。
その集団が内戦状態になった国に入り、戦闘力をみせつけたことで、周囲から人が集まったように見られます。
周囲には同じように宗教を信じる者、同じように武力をもって行動する者が多数いると思われます。その者たちが強い勢力に引かれるようにして加わった、そのようなことがあったのだと思います。

そうしてある程度、勢力が急拡大することで、その武装勢力に関する伝聞が広がっただろうと思います。
武装勢力は非常に強く、また残虐で、しかも制圧したことで大量の武器弾薬を手に入れている、などの話が伝わるようになっただろうと思います。また、それが世界で報じられるようになったと思います。
伝聞も報道も、その多くは事実だったのだろうと思います。
それを見聞きした人々は、『危険だ』というイメージを抱いたと思います。
そしてその『危険だ』というイメージは、大きめに割り増しされたと思います。

進撃する武装勢力の前に、多くの守備兵が逃走したと聞きます。『強くて、残虐で、危険だ』というイメージからくる『恐怖』から逃げ出す兵がいたのかもしれません。
それに引かれるように、次々と兵が逃走したのかもしれません。
みんなが逃げたしているのに残っていたのでは危なくなるだけだと、誰でも思うものかもしれません。
そして多くの兵が逃走したという事実が伝わり、広く報じられることで、『強くて、残虐で、危険だ』というイメージが、さらに強まったように感じます。

その『強くて、残虐で、危険な武装勢力』というイメージが、一種のカリスマ性に繋がったようにも見られます。
過激派武装勢力、それ自体がカリスマ性を帯びたと感じるのです。
そしてこの過激派武装勢力の急速な台頭が世界中で報じられることで、その勢力に帯びた一種のカリスマ性が、より強まったようにも思われます。
そこで欧米からも、その過激派武装勢力に加わる者が増えたのかもしれません。

カリスマ性があると、多くの人が引き寄せられ、集団は急速に拡大することがあると思います。
そして集団が大きくなると、必然的に活動範囲も広くなるものだと思います。ただ急速に人数が増え、急速に勢力範囲が広がると、中心部による統率が難しくなるものだと思います。
中心部で統率することが出来なくても、集団そのものにカリスマ性がある場合、勢力は弱まりにくいような気がします。
そう考えると勢力範囲の拡大は、中心部によって統制されたのではなく、勢力が大きくなったことで、自然発生的に起きたという一面があるのかもしれません。

急速に拡大した集団には、それによる問題が発生するものだと思います。
しかし、信仰を支配に使う集団や、カリスマ性に引き寄せられた勢力は、外部から壊すことが難しいと思います。
また、イメージが割り増しになっているかもしれませんが『強くて、残虐で、危険』であることは確かだと思います。
それにゲリラ戦では、軍事力や練度の差が出にくいと思います。それはベトナム戦争の時から見られていたことだと思います。
そのことからも、モンスターであることは間違いないと思います。

しかしモンスターは、実態以上にイメージが恐れられていることがあると思います。