2014年10月17日金曜日

詭弁

“新聞に軽減税率を導入するということは、国民の税金を使って新聞業界を優遇すること”
 それが実際のところだと思います。
 軽減税率を導入すると、その分消費税の税収が下がります。減ってもやっていけるのでしたら、税率を抑えればいいと思います。
 やっていけないから増税するのだと思います。
そうなると減った分は別の税金で賄うことになります。
新聞にかかる消費税を安くするために、国民は別の税金を納めることになるといえるような気がします。
 つまり、国民の税金で新聞業界を優遇するということです。
 国民はその是非を考えるべきだと思います。
 
 新聞社は民間企業です。“国民の税金を使って民間企業を優遇する”それ自体は行われていることだと思います。
 国民が安定した生活をするためには、公共性の高い業務を担っている企業の経営が安定している必要があると思います。
 そのために国が税金をつかうこともあると思います。

 新聞には公共性があると思います。
 では国の税金で優遇するべきだろうか。そうすべきではないと思います。
 新聞が言論機関であるならば、国と対立することも多々あるはずだと思います。
 そうでなければ、言論機関として存在意義が相当に小さくなると思います。
 国と対立することが多々ある言論機関は、原則的に国から優遇されるべきではないと思います。

 ただ報道機関は、国民にとって必要だと思います。
 その報道機関が民間企業であるからには、そこが経営出来なくなると、新聞がなくなってしまいます。
 報道機関の経営を安定させるため、国の税金で優遇するべきだと考える人もいると思います。
 しかしそれならば、軽減税率という制度ではなく、堂々と「新聞業界優遇税」の導入を訴えるべきだと思います。

それでは到底国民の理解を得られるはずがないため、逆進性の抑制、低所得者の負担軽減、納税者の負担感の軽減、それらを建て前にして、新聞業界を優遇するために軽減税率の導入を求めていると感じます。
 そしてそれは以前から多くの人がわかっていたことだと感じます。
 しかし口に出されてこなかったのだと思います。

『逆進性の抑制、低所得者の負担軽減、納税者の負担感の軽減、それを建て前にして、新聞業界を優遇するために軽減税率を導入するべきだ』
日本新聞販売協会はそのような趣旨にも受け取られる主張をしていますが、このところ新聞業界全体からそのような意味合いが含まれた意見が発せられることが増えているように感じられます。
 
『消費税が増税されれば売り上げが落ちる。それでは経営が苦しくなる』
 それは新聞業界だけではないと思います。ありとあらゆる業界で見られることだと思います。
  ありとあらゆる業界の税負担を軽減していたら、消費税という税制度は成り立たないと思います。
  ただ新聞業界には、『新聞業界は特別だ』という意識があるように感じます。

『民主主義国家にとって新聞は必要なものだ。安定して国民に新聞を供給するには、新聞業界の経営が安定しなければならない』
 それは軽減税率とは、別の話だと思います
 軽減税率が導入されても、新聞購読者が減少する根本的な理由を解消することは出来ないからです。

 インターネットの急速な普及や人口減少、報道には即時性が求められるようになり続け、メディアへの接し方も多様化している、新聞の発行部数が減少する要素は今後も増えることはあれ減ることはないと思います。
 しかしそれでも、新聞に対する需要がゼロになることはないと思います。
 ただ資本主義経済の下では、需要がゼロになる前に、採算面から供給をとめてしまうために、完全になくなってしまうものだと思います。

 新聞業界が取り組むべきことは、新聞から購読者が離れないようにするにはどうすればいいか、発行部数が減少しても供給し続けるにはどうすればいいか、ということだと思います。
 そのために国から支援して欲しいなら、真っ当に堂々と正面からそう国民に訴え、理解を得ようと努力するべきだと思います。
 詭弁を弄することに、心血を注いでいる場合ではないと思います。
 
詭弁だと指摘されても、今まで誰もそれを口に出さなかったこともあって、論理的に反論する言葉など端から持ちあわせておらず、ひたすら建て前を繰りかえし、新聞は特別なのだと発行部数減少の根本的対策にならないことを繰り返すばかりに見えます。

 軽減税率の導入は、国民に大きな影響を与えることだと思います。
 軽減税率を導入しても発行部数の減少を抑える根本的な理由の解消にはならない新聞業界のために、そんな大きな影響を国民に与えるべきではないと思います。

 昨年だったか、軽減税率の対象品目について話し合うため、政府が有識者を集めたことがあったと思います。
 そのときは有識者のほぼ全員が、軽減税率の導入そのものに反対だったと思います。
 そんな軽減税率が、国民にとって“いいこと”であるはずがないと感じます。

 それなのに軽減税率の導入に賛成する国民の声が多いのは、いかに新聞業界が報道機関と言論機関の役割を利用して、国民をたぶらかしてきたかということを表している気がします。