2014年10月5日日曜日

殺戮に歯止めをかける心理を、人間は自覚のないまま失ってしまう日がくる

 数日前、アメリカの公道で走行している自動運転車について書きました。そこでインターネットの記事を取り上げました。
 その記事には、自動運転車の問題点が指摘されていました。
 その一つに “自動運転車が犯罪に使われる懸念がある”ということがありました。

 自動運転車に爆弾を積んで、狙った場所に無人で向かわせれば、自爆せずに爆弾テロを行うことが出来るというようなことが書かれていたと思います。
 確かにあり得ることだと思います。
 おそらく自動運転車が市販されれば、無人での走行は出来ないような機能がつけられるのだろうと思います。
 しかしテロリストはその機能を無効化するなり、装置を取り外すなり、車両の一部を破壊するなりして、破壊活動や犯罪行為に自動運転車を使う可能性があると思います。

 無人で走行させることが出来れば、爆弾テロ以外にも様々な犯罪に使用されることが考えられます。
 窃盗や詐欺、恐喝や誘拐などです。
 盗品や身代金の運搬や、追跡に対するおとりに使われるかもしれません。
 その他に、起きてみるまで思いつかないような使い方で、犯罪に用いられる可能性があると思います。

 ただだからといって、自動運転車を市販するべきではないとか、無人走行に関する技術開発を進めるべきではない、と言いたいのではありません。
そもそもあらゆる道具や機械や自動車は、様々な形で犯罪に使われています。人間が運転する一般自動車も多くの犯罪に使われています。
あらゆる道具や機械や自動車は、時に犯罪に使われることがあっても、様々な形で人間の役に立っています。

 まだ大分先のことだと思いますが、もし自動車の無人走行が実用化したら、大いに役に立つと思います。
 これから先進国では高齢化や人口減少が進むと考えられています。日本は今まさにその問題に直面しているといえるような気がします。
 自動運転車や無人走行車は、そんな社会では有用だと感じます。
 そう考えると、犯罪に使われることに対して、十分な対策を施すことが必要だと思います。

 それは技術面だけでなく、法律や道路環境、社会環境の整備なども求められると思います。
 ただ具体的にどのようなことをするべきとなると、非常に難しいと思います。
“難しいが必要なこと”といえるような気がします。
 そして“難しいが必要なこと”は早くから手をつけるべきだと思います。
 技術の進歩を示すことに心血を注いでいると、“難しいが必要なこと”に目が向かなくなることもあるものだと思います。

 もし無人走行車が、人間が運転する一般車両と一緒に公道を走るとなると、実に多様な状況で自律的に判断することになると思います。
 それは倫理観に葛藤が生じる状況もあると思います。
 倫理的な葛藤が生じる状況では、人間でも判断が難しいと思います。
 正解などない場合が多いと思われるからです。
 
“正解などない倫理的に葛藤する状況に直面した時、どのような判断を下すように設定するのか”
それは、今まさに人間がつきつけられている課題だという気がします。
 人間が判断を設定するのではなく、あくまでも機械に決めさせることも可能なのかもしれません。
 しかしそうなると、倫理的な判断を機械に委ねてしまうこと、それ自体に対する是非が問われると思います。

 この問いは、より多くの人命にかかわるものの技術開発では、より深刻であるはずだと思います。
 多くの人命にかかわるもの、兵器はその一つだと思います。
 現在、戦闘行為も含めて自律的に行動するロボット兵器の開発に、力が注がれていると聞きます。
 世界最高水準のロボット技術は、兵器開発につぎ込まれているといえるのかもしれません。
 それは現代の戦争において、敵に接近し自律的に人間を殺す兵器は、有用だからだと思います。

 今、空爆が行われている地域がありますが、それだけでは戦闘に決着をつけることは出来ないと見られています。
 つまり空爆だけで、敵を壊滅状態に追い込むことは難しいということです。
 しかし、地上軍を使えばそれが簡単に出来るわけではないと思います。
 
地上軍を派遣しても、相手は一般市民にまぎれて潜伏し、ゲリラ戦を展開すると思われます。それでは、圧倒的な軍事力の差があったとしても、それが戦果に結びつきにくいと思います。
 そのため戦闘は長びき、兵士、戦闘員、市民、多くの犠牲者が出ると思います。
 
 兵士がロボットならば、その分だけは人間が死なずに済むかもしれません。
 しかし人間が関わらず、ロボットが人を殺すことで、人間は人を殺すことに対する倫理観を崩壊させてしまうような気がしてなりません。
“殺戮に歯止めをかける心理を、人間は自覚のないまま失ってしまう日がくる”

それは想像しているより、遙かに恐ろしいことだと思います。