2014年10月28日火曜日

固定観念

 報道は早く伝えられるに越したことはないと思います。
 その点において新聞は不利な媒体だと思います。それは新聞の宿命のようなもので、ずっと前から誰もが分かっていたことだと思います。
 朝刊と夕刊があるのは、即時性のなさを補う意味合いがあると思います。
 今はインターネットで報道がすぐに流れ、それを好きな時間に見たり読んだりすることが出来ます。

また最近は、テレビの画面で番組表を表示することが出来ますし、そこで番組内容の説明も見られます。
こうして考えると、朝刊を早朝に配達する利点が薄らいでいると感じます。
また朝刊と夕刊の一日に二回配達をしても、即時性のなさは他の媒体には到底かなわないような気がします。

ただ毎日一軒一軒配達すること、その仕組みが確立していること、それは新聞業界にとって大きな強みになり得ると思います。
それを生かそうと考えるものだと思います。
他の業種と連携するなどして、“毎日届けること”を付加価値にすることも出来得るような気がします。

早朝に朝刊を配る必要性が薄らいでいるなら、配達の時間帯を変え、時間帯に幅をもたせることで、提携する業種の選択肢が広がるような気がします。
ただそうはいうものの、情緒面でも実務的にも新聞の配達時間をすぐに変えることは難しいと思います。
そのため慌てることはないと思いますが、今ならまだ試行錯誤や社会実験をしている時間があるような気がします。
何事も切羽詰ってからでは、動きようがなくなるものだと思います。

新聞が売れなくなっている理由は、インターネットの普及、人口減少、世帯数の減少、少子高齢化などがあげられると思います。
いずれの理由も新聞業界の努力で、解消することは難しいと思います。
人口減少は、あらゆるものの売れる数が減る理由になると思います。
新聞は、定期的に新機種を出せるものではありませんし、新聞がなければ生きていけないというものでもありません。
そう考えると、新聞は人口減少によって売れなくなる傾向が強い商品といえるかもしれません。

そうなると、『売れなくなることを抑えるにはどうすればいいのか』を考えるとともに、『売れる数が減っても、売り続けていくにはどうすればいいのか』を考えなければならないと思います。

 新聞を軽減税率の対象にすると、増税直後に販売数が落ちることを少しは防げると思います。
ただ増税からある程度の時間が過ぎると、販売数の減少を抑える効果は随分と低くなると思います。
増税からある程度の時間が過ぎたころ、金銭的な理由で新聞購読をやめる人にとっては、消費税の数パーセントはほとんど意識されないと思います。
『売れなくなることを抑えるにはどうすればいいのか』『発行部数が減っても、売り続けていく』その対策として軽減税率の効果は、かなり小さいと思います。
 
 新聞業界は、軽減税率は新聞の発行部数減少を抑える施策だと考えている節があります。
そのために導入するべきという趣旨だと受け取られる主張を見聞きします。
しかし軽減税率は、新聞発行部数が減少している理由、つまりインターネットの普及や人口減少、世帯数の減少に働きかける策ではないと思います。

 ところで、「軽減税率は大きな意味で経済対策の側面がある」という発言を耳にします。
個人的にそうとは思えません。むしろ大きく見るほど、経済対策として逆効果だと思います。
長い目で見るほど、軽減税率は景気を悪くすることに繋がる可能性が高いと思います。

軽減税率は生活必需品を対象とします。
生活必需品は、増税前に買いだめされるため、増税後は売れる数が減るものだと思います。
しかし生活必需品は、買いだめしたものを使い果たしてしまうと、買わざるを得ないと思います。
軽減税率が導入されてもされなくても、生活費需品の売れる数はあまり変わらないと思います。

軽減税率を導入するために、他の税を重くすることが考えられます。あるいは、消費税の標準税率を上げなければないと思います。
前者の場合、現役世代の税負担が重くなる可能性が高いと思います。

現役世代の税負担が重くなると、生活費需品ではないものが買い控えられると思います。
また、軽減税率を導入したため標準税率があげられても、生活必需品ではないものが買い控えられると思います。
つまり軽減税率の対象ではない商品が売れなくなるということです。
また軽減税率が導入されたからといって、生活必需品の売り上げが伸びるわけではないと思います。
経済全体でみれば、消費を冷え込ませると思います。
それは景気を悪くする要因になると思います。

今の日本に軽減税率を導入することは“大きな意味で経済対策”という側面などないと思います。
“景気を悪化させる要因になり得る”という側面があると思います。

軽減税率は、インターネットが市民の手にない時代に、人口減少など起きていない社会で考えられた制度だと思います。
それをこれからの日本に導入しても、いいことはないと思います。
インターネットはこれからも利用され続け、広がり続けると思います。
少子高齢化も人口減少も、まだ歯止めがかからないと思います。

固定観念に縛られ、思考が硬直している人間は、過去も現在も未来も見えていないことがあると思います。

しかし固定観念に縛られ、思考が凝り固まっているがゆえに、見えていないことに気づかないものだと思います。