2014年10月23日木曜日

予測が外れた場合どうなるか。それを秤にかけて考える

 7月~9月の経済成長率は、みんなが大喜びするほどいいことはないと思います。
 しかし、みんなが嘆くほど悪いこともないと思います。
 それが政権を苦しめると思います。

 7~9月の経済成長率の数字を見たうえで、経済状況などを総合的に勘案し、来年消費税を10%に引き上げるのか、先送りするのか、首相が決断することになっています。
7~9月の経済成長率は、誰もが『これなら増税しても大丈夫』というほど良くはなく、誰もが『これでは増税できない』というほど悪くはないと思います。
そうなると、増税しても、増税しなくても、反対意見がでると思います。
そしてそれは、決定した後でもなくならないと思います。
状況によっては決定した後、反対意見がより大きくなり、批判がより高まることもあると思います。
増税をしたとしても、先送りしたとしても、です。

つまり政権は、打たれる道しかないといえるような気がします。打たれない道はないというべきかもしれません。
しかしそれは首相が自ら招いた状況だと思います。
「私が決断します」ということで、“議会が決定した”ということを消してしまったように見えます。
 せっかく不人気の他者が、不人気な政策を決めたのに、それをわざわざ覆すかのようにして、自分の責任にしてしまったように見えます。

 それが決断を要する事柄ならば、一国のリーダーとして潔くも見えます。しかし消費税の増税については、端から改めて決断する余地などなかったと思います。
 誰の目にも明らかなほど景気が悪ければ、“増税先送り”という選択肢もあると思います。
 その場合、決断はむしろ簡単ですし、その決断に関して言えば、批判が大きくはならないと思います。
 ただ誰の目に明らかなほど景気を悪くしたことを、強く批判されるのは避けられないと思います。

 7~9月の数字は、良くても悪くても“誰の目に明らか”といえる状況ではないと思います。
 明らかに景気が悪ければ、世界中が『増税先送りは当然』という見方をすると思います。
 しかし“良くないことは確かだが、悪いとまでは言いきれない”という状況で増税を先送りすると、『これで増税できないのでは、いつ増税できるのかわからない』という見方をされかねないと思います。

『この経済状況で増税できないのなら、すごく景気が良くならない限り増税は出来ない』
『しかし今の日本には、少しずつ景気を良くすることは出来ても、すごく景気がよくなる材料はない』
『しかも日本はかねてから、政治的に消費税を上げることが難しい』
『この状況でも政治家が増税を決められないなら、先送りすればするほど、政治家は増税しなくなる』
『その間にも日本の財政は悪化を続ける。日本の財政は危機的状況になる可能性が高まり続ける』
『財政も社会保障も税に関する経済政策も、増税を前提に考えらえている。決定的に数字が悪いわけではないのに、それを一旦とりやめにしてまで増税を先送りするとなると、本当に増税する気があるとは思えない』
そう見られる懸念があると思います。

7~9月の計税成長率が“決定的に悪くない。しかし悪いことは確かだ”という状況だった場合、増税したら日本の景気は悪化する可能性が高いと思います。
しかし増税しなければ、やはり上に書いた懸念があると思います。
 
 それにしても、今の世界経済は予測が非常に難しいと思います。
消費税率引き上げを先送りした場合、世界経済がどう反応し、どんな影響があるか、その予測もとても難しいと思います。

 何かを決めなければならない。しかし予測することが難しい。そういう時は、予測が外れたときにうける痛手の大きさを比べてみることは有効だと思います。
『ここで増税できなければ、日本はこの先も消費税を上げられない。社会保障制度は破たんしかねないし、財政は危機的状況になりかねない』
世界はそういう見方をするだろう。
その予測が外れた場合、日本と世界が受ける痛手はどれほどの大きさになるか、考えてみます。

『日本は増税が景気にあたえる影響をよく見て判断している。増税先送りは正しい決断だ。日本の景気はこれからきっと良くなる。その後で、しっかりと増税を行うはずだ』
世界はそういう見方をするだろう。
その予測が外れた場合、日本と世界が受ける痛手はどれほどの大きさになるか考える必要があると思います。

 後者の予測が外れると、日本経済は大きな打撃を受けると思います。
 それは世界経済にも小さくない影響を及ぼすと思います。

『今の雰囲気で増税すれば、おそらく景気はかなり悪くなる。しかし増税せざるを得ない』
 それが掛け値なしの、今の日本の実状だという気がします。
 この上は、いかに増税を乗り越えるかということに意識を向かわせるべきだと思います。
 しかし「私が決断します」という形になっているために、決断するまではそうならないと思います。
 決断した後でも、必ず反対意見が強くあり続けると思います。
 そのため決断した後も、いかにして増税を乗り越えるかという意識がなかなか強まらないと思います。

 それも首相が招いたことだと思います。