2014年10月20日月曜日

傲慢と硬直した思考

“逆進性を抑えること。低所得者の税負担を軽くすること。国民の税負担感を軽くすること”
 軽減税率はいずれも効果が低いと思います。
 
 逆進性とは、所得が低い人の方が、高い人よりも税負担が重くなることだと思います。
 所得の差が税負担の差になって表れる、そういえる気がします。
 そうなると、所得によって税に差をつける仕組みでなければ、逆進性を抑える効果は小さいと思います。

 軽減税率は“所得に応じた制度”ではないと思います。
商品に差をつける制度ですから、所得の高い低いに関わらず、同じものを買えば同じ税金を納めることになります。
 所得に応じていないのですから、逆進性を抑える手段として、また低所得者の負担を軽減する手段として、有効ではないと思います。

 また軽減税率を導入すると、消費税の税収が低くなります。
 それでもやっていけるのならば、税率の上げ幅を小さくすればいいと思います。やっていくためには、他の税金を増やすことで埋め合わせしなければならないと思います。
 結局、税金を納めるのですから、国民の税負担を軽減するわけではないと思います。
 
 効果が低いのに、国民に与える影響は大きいと思います。
 対象品目を選ぶのが難しいと思います。それには業界の思惑や、政治的な要素が関わるのでなおさらだと思います。
 また消費者は商品の値段が分かりにくくなり、商店は精算や事務処理が煩雑になると思います。
 それらは慣れによって落ち着くものだと思います。
ただ対象品目は、社会の変化、市民生活の変化、などに応じて変え続けていくべきものだと思います。
 それを円滑に行うことは、非常に難しいと思います。
 
 しかし軽減税率を導入している国が多いと聞きます。
“逆進性を抑えること。低所得者の税負担を軽くすること。国民の税負担感を軽くすること”その効果が低いにも関わらず、それを理由に掲げて軽減税率を導入している国が多いということだと思います。
 それは国民のためにはならないと思います。

ではなぜそんな制度を導入しているのか考えると、新聞業界を優遇する意味合いが強い制度だからだと思います。
 そしてそれは周知の事実でありながら、指摘されてこなかったと感じます。
“逆進性を抑えるため。低所得者の税負担を軽くするため。国民の税負担感を軽くするため”それらは建て前に過ぎずないと多くの人がわかっていながら、『まあ、仕方ないだろう』『そういうことも必要だろう』と受け入れていたのだと思います。

 ただ社会は常に変化し続けているものだと思います。
 おそらく軽減税率が初めて導入された時と、今の日本とでは社会が違っていると思います。
 おそらく軽減税率が初めて導入された時には、紙の新聞がなくなる心配など、ほとんどしていなかったと思います。
 今の日本の社会では、新聞や書籍など紙媒体の売り上げが下がり続けていると聞きます。
 新聞業界や出版業界は、その対応に迫られていると思います。
軽減税率の導入はその対応の一つだと新聞業界は考えており、そういう趣旨の主張をしているように見られます。

しかし軽減税率は、増税時の一時的な落ち込みを抑える効果はあるものの、発行部数の減少をおさえる効果は小さいと思います。
効果が小さいのに、国民に与える影響は大きいと思います。
むしろインターネットで批判され、反感が高まり、逆効果になることもあり得ると思います。

逆進性の対応など“建て前”に対しても、新聞の売り上げ減を抑える“実情”に対しても、効果が低いと思います。しかし国民生活への影響が大きいと思います。
そんな制度を導入しても、国民のためにも、国のためにもならないと思います。
新聞業界のためにも、出版業界のためにもならないと思います。

なぜそんな制度の導入を推し進めようとしているのか考えると、分析も認識も出来ていないのだろうと思われます。
思考が硬直しているのだと思います。
『軽減税率の導入は新聞業界のためになる』それが固定観念になっているのだと思います。よく見極めようとせず、前例があるのだからそういうものなのだ、そう思いこんでいると感じます。
 社会が移ろっていることに、気づいていないように見られます。

 また新聞社は大きな組織であり、新聞業界はそれが広く繋がっていると思います。
 どちらも、思考の硬直化を助長する要素になり得ると思います。

 確かに新聞が軽減税率の対象になれば、業界は優遇されることになると思います。
しかし今、新聞業界が直面している問題に対して、それはあまりも効果が低く、その割に国民に与える影響があまりにも大きいと思います。
 そんな軽減税率にこだわることで、新聞業界は難しい問題に対する本質的な対応に、意識が向けられずにいるように見えます。

 また新聞業界の傲慢も感じます。
『新聞業界は優遇されるべきなのだ。新聞業界は特別なのだ。新聞が導入するべきだと訴えれば、それは実現されるのだ』
 個人にも、組織にも、報道機関にも、言論機関にも、自負心は必要だと思います。

 しかし傲慢は身を滅ぼすものだと思います。