2013年12月10日火曜日

人間性の危機



「人間を殺傷する判断を機械に任せてはいけない」
ロボット兵器の本当の恐ろしさは、その先にあると思います。

無人攻撃機が実戦に投入されています。その出撃回数は、どんどん増えていったようです。それは戦闘行為において、無人機が有効であることの表れといえるかもしれません。
自軍の兵士を危険にさらすことなく敵を攻撃し破壊するのですから、兵器としての観点では無人機は有効だと見られるのだと思います。

ただ、民間施設を攻撃し、民間人の犠牲者が多数出ていると聞きます。
また、無線操縦する兵士の心理的影響を問題視する声も聞かれます。それが戦闘に影響を与えるともいわれています。
それでも、無人攻撃機が実戦投入されたことで、他の国も開発を急いだように見られます。戦争において無人の兵器が有用であると考えられているのだと思います。

さらに現在開発が進められているのは、人間が操縦する必要のないロボット兵器だと聞きます。ロボット、即ち機械が自分で判断し戦闘行為を行うのです。
兵器ですので当然人間を殺傷する判断も、ロボットに組み込まれた人工知能、即ち機械によって下されます。
そこで冒頭に書いたことがいわれています。

ロボット兵器は自ら状況を認識して行動します。
『正面にいる人間は敵である。攻撃するべき相手である』と判断すれば、ロボットが人間を殺すことになると思います。
それは倫理的に問題があると指摘されています。

『人間を殺す判断を機械にさせてはいけない』
本当の怖さはその先にあると思います。
『どうしていけないの?』
そう問われてからだと思います。
『当たり前じゃないか。機械は間違うかもしれない。それに人間には、人間しにしか感じられないものがあるんだ。だいたい人の命を奪うことを工場の工程のように機械的に処理するなんて、それは非人道的だ。倫理的にも道徳的にもゆるされるはずがない』

『本当にそうかな。
人間が操縦する戦闘爆撃機だって、数えきれないほど誤爆をしているじゃないの。
誤爆じゃなくて、民間人を狙ったことだってあるじゃないの。
それどころか、まるで楽しんでいるかのように、ヘリで民間人に機銃を浴びせていることだってあったんじゃないの。
民間施設に迫撃砲が打ち込まれ、多くの市民を殺していることだってめずらしいことじゃない。

完全に機械にまかせたほうが、きっと誤爆は減るよ。
機械がデータを分析したなら、先入観や感情が介在しないから、より正確に判断できるさ。
それに誤爆だと指摘されたら、機械が判断したデータを示して、「このようなデータから敵だと機械が判断して、攻撃しました」って、説明できるでしょ。

攻撃するべき戦闘員か、攻撃してはいけない民間人か、その判断だって機械の方が正確に出来ると思うよ。
 少なくても、笑いながら民間人かもしれない人間を機銃掃射するなんてことはないだろ。
大体、ロボットなら、”戦闘員か民間人か”その判断を誤っても、こわれるだけですむでしょ。
もし敵戦闘員を民間人だと判断して攻撃しなかったとして、人間の兵士だった命が奪われてしまうかもしれないけど、ロボットなら機械が壊れるだけ。

人間を殺す判断なんて、極めて冷静に下されなきゃいけないものでしょ。
感情や先入観なんて、極力介入させるべきじゃないよ。
でも人間では、そんなこと出来ないよ。人間は常に冷静な判断をくだせるものじゃない。
人間の思考は、その日の体調や気分にだって左右されるじゃないか。誰も、それを完全になくすことなんて出来ないよ。
でも機械なら、感情や気分なんて端から持ち合わせていない。
極めて冷静な判断が出来るってもんさ。

そもそも機械に人を殺す判断をさせてはいけないっていうけどさあ、それじゃあ人間に人間を殺す判断をさせることは、倫理的なの? 道徳的なの? 道義的なの?
人間を殺す判断をするのは、心理に大きな負担を与えるんじゃないの? 
実際に復員した兵士の多くが、精神を病んでいるんだよね。
ずっと前の戦争から、言われていることだよね。

それでも、人間に人間を殺させてきたんだよね。
人間を殺す判断を人間に下させてきたんだよね。
これからもずっと、人間を殺す判断を人間に下させようというんだよね。
機械に人間を殺す判断を下すことは非人道的?
本当にそうなの?』

これは”哲学ごっこ”ではないと思います。いつか人間は、このような問いを突きつけられると思います。
その時に、誰がどういう答えを出すのでしょう。
個人的に、一切の人間性を排除して、機械的に人命を奪うことをはじめてしまうと、殺戮は際限がなくなると思います。
それは人間の危機であり、人間性の危機だと思います。