2013年12月17日火曜日

サンタクロースは本当にいるの part6



「別にいてもいなくてもどっちでもいいよ」
「なんで?」
「だって、欲しかったゲームがもらえるんなら、それでいいじゃん。くれるのは誰でもいいよ」
「で、 サンタクロースはいると思う?」

「別にどっちでもいいけど、いるわけないじゃん」
「どうしてそう思うの?」
「だって僕はクリスマスプレゼントなんて、誰からも、もらったことがないもん」
「え? クリスマスにプレゼントもらったことがないの?」

僕の記録では、サンタクロースを信じていたクリスマスは一回だけです。まだ本当に幼かったころでした。
あのクリスマスは、サンタクロースが夜中にプレゼントを持って来てくれると、親が言っていたのだと思います。

子供がサンタクロースを信じるかどうかは、やはり親の考え方が大きく作用すると思います。
我が家の場合、親は明確に方針を決めていなかったような気がします。
そのため、子供たちがほんの幼いときは、サンタクロースがプレゼントくれるような話をしたものの、それを毎年続けることはなかったのだと思います。
いつのまにか、クリスマスは『プレゼント』と称しておもちゃを買ってもらえる日になっていたように思います。

「プレゼントはもらわないけど、お金をもらえるんだ。好きなものを買えるから、そっちのほうがずっといいよ」
「好きなものを買ってもらって、それをプレゼントしてもらえばいいんじゃないの」
「なんでわざわざそんな面倒なことすんのさ。自分で買ったほうが簡単じゃん。お父さんにゲームのこと言っても、ぜんぜんわかんないし。違うの買ってきちゃったら、めちゃショックじゃん。それに、店で見ているうちに欲しいものが変わっちゃうことだってあるし」
「お父さんといっしょに買いに行ったら? その時に欲しいものを買ってもらえるよ」

「なんでそんな面倒なことしなきゃならないの? それじゃあ、お父さんが休みの日じゃなきゃ行けないじゃん。それにプレゼントだと一個しかもらえないでしょ。お金だったら何個か買うことも出来るし、あまったらお菓子とかも買えるし」
「じゃあ、毎年イブの日にお金をもらって、クリスマスに自分で買いに行くの?」
「ううん。イブの前の土曜日にお金をもらえる。それで日曜日に買ってくるから、クリスマスの前から新しいゲームで遊べるんだ」
「そっか。ほんとにプレゼントをもらっていなんだね」

「サンタクロースが本当にいると思ってんの?」
「うん。いるよ」
「なんで?」
「だって毎年プレゼントをもらえるもん」
「サンタクロースがプレゼントを持って来てくれるの? それはお父さんがサンタの格好してるだけだろ」
「違うよ。ゲームとかおもちゃはクリスマス前の日曜日にお父さんと一緒に買いにいくんだよ」

「じゃあ、サンタがプレゼントをくれるんじゃないじゃん」
「ゲームを買ってくれるのは、お父さんだよ。でもプレゼントをくれるのはサンタクロースなんだ」
「なにそれ?」
「クリスマスイブの夜に、サンタクロースが来て、ただのゲームをクリスマスプレゼントに変えてくれるんだ」

「はあ? ゲームがプレゼントに変わる? どうなるの? レアアイテムがついてくるの?」
「そんなことないよ。ゲームはなにも変わらないんだ。目で見ても手で触ってもわからない。でも他のゲームとは違うんだよ」
「だからなにがさ」
「クリスマスプレゼントだってことさ。他のゲームはクリスマスプレゼントじゃないからね」

「なんだよ、それ。わけわかんね」
「そりゃそうだよ。だって君はイブの夜の前に、遊んじゃんうんだもの。それじゃあサンタが来てもプレゼントに変えられないよ」
「じゃあ、せっかく買ってきたのに、クリスマスの日まで遊ばないの? つまんないじゃないか」
「イブの夜まで楽しみに待っているから、サンタクロースがプレゼントに変えてくれるのさ。目で見ても手でさわってもわかんないけど、ただのゲームとはぜんぜん違うんだ。見えないけど、すごくいいものがつまっている気がするんだ」

僕は子供のころ、サンタクロースを待っていたクリスマスは一度だけだったと思います。
ただ人の考えは変わるものです。信じるものも変わるものです。子供のころ信じていなかったことを、大人になってから信じるようになることもあるものです。

「おいどうした? 新しいゲーム買ってこなかったのか?」
「ううん。買ってきたよ」
「遊ばないのか?
「うん。まだいい」
「どうして? せっかく買ってきたんだから、遊べばいいじゃないか」
「いいんだよ。後で遊ぶから」
「なんだ。欲しいものがなかったのか?」
「そうじゃないよ。一番欲しいやつを買ってきたけど……。いいんだよ。後で遊ぶんだってば」
「変なやつだな。まあお前が買ってきたんだから、好きにすればいいんだけど」
「……。だって……。今日はまだクリスマスじゃないじゃん……」