2014年5月13日火曜日

国内から大きく支持されるものの他国から批判される人物は、その国にとって危険因子になることがある


 少し前から「右傾化」という言葉をよく耳にします。

 以前、「右翼・左翼」という表現について書いたことがありますが、近年「右・左」という言葉は“意味合いが曖昧”というか、“使われ方が曖昧”だと感じられます。

 

「右翼・左翼」という言葉は、学校の授業で習った覚えがあります。確かその国の社会体制を支持する側を「右」、反対する側を「左」、そのように教わった気がします。

それならば“意味合いが曖昧”ではないような気がします。

ただあのころと、いまでは随分と世界が違っているように感じます。

かつて世界は、二つの大きな勢力がにらみ合っていました。そのため、世界は大きく二つに分かれていた感があります。

そうなると、“どちらかと”いう認識がしやすかったのだと思います。つまり“右か左か”ということです。

冷戦時代は“資本主義と社会主義の対立”という縮図が世界にあったと思います。

 

日本は資本主義を社会体制としています。そこで日本では、資本主義的な考え方を“右”、社会主義的な考え方を“左”という言葉で表現していたと感じます。

そうなると冷戦時代のソ連は社会主義国家でしたので、右と左の言い方は日本とは逆になります。社会主義的な考えが“右”で、資本主義的な考え方が“左”ということです。

ただ社会主義国の国内事情に対して「右」と「左」を使うことは、冷戦時代からあまり多くなかったような気がします。

それは資本主義的な考えが、国によって“右”と書かれることもあれば、別の国では“左”と言われることもあるようだと、ややこしいと考えられたからかもしれません。

 

そして冷戦が終わると、“資本主義と社会主義の対立”という概念が薄らいだと感じます。

それによって“右か左か”の概念は曖昧になったと感じます。

ただ“資本主義と社会主義の対立”はなくても、国内で意見の対立はあります。情報が氾濫し、社会が複雑になることで、国内でも多国間でも対立は激しくなっているような印象があります。

しかも対立の構造も複雑で、“右か左か”では表現できない場合がほとんどだという気がします。

 

例えば大統領が“大国より”の政策を進め、それに反対する民衆がデモや暴動を起こした場合、大統領は“右”で、民衆は“左”という分類になると思います。

そのデモや暴動によって大統領が失脚し、“連合より”の暫定政権が出来たら、それが“右”ということになるかもしれません

暫定政権に反対し、“大国より”の住民が庁舎を占拠したら、その住民側は“左”ということになるかもしれません。

この国の状況は“右か左か”という概念では語れないような印象を受けます。実際にその言葉を聞いたことはないと思います。

 

また、共産党が一党支配している国では、共産主義的な主張が“右”で、資本主義的な考えが“左”だと思います。

しかし政治体制は一党支配でありながら、経済面では事実上資本主義のやり方をかなり取り入れていると感じられます。

そうなると“右か左か”という概念では語れないような印象を受けます。実際にその言葉を聞いたことはないと思います。

 

 現在「右派・左派」という言葉が使われるのは、冷戦時代から今日に至るまで資本主義を社会体制としている国が多いと感じます。

 上に書いたように、冷戦時代から社会主義国に「右派・左派」が使われることは多くなかったと思いますし、その傾向は政治体制が変わった今でも続いているような気がします。

 

また、現在は社会が複雑になり“右か左か”では表現しにくいこともあると思います。

 それなのに、少し前から頻繁に「右傾化」という言葉を耳にすると感じます。

“右か左か”の意味が曖昧になり、曖昧であるがゆえに便利に使われているのかもしれません。

 意味合いよりも、慣例的に“右”という言い方をしているような印象を受けます。

 

 最近使われている「右傾化」は、“自国の主張を強くする”という意味合いを感じます。

“自国の正当性を強く主張する。自国の利益になることを強く主張する。強さは武力に通じ、それを用いることや強めることを強く主張をする。自国を最優先する観念が強く、それらは外国に対する強い姿勢になって表れることがある”  

そのような傾向を、最近は「右傾化」という言葉を当てているような気がします。

“右”の意味合いが曖昧になり、また慣例的に使われているとともに、他に適当な言葉が見つからないということがあるような気がします。

 かつての戦争を思い起こさせるような言葉を避けていることもあると思います。

 またそういう言葉は外国に非常によくない印象を与えるかもしれません。それが外交や経済に悪影響を与えることもあり得ると思います。

 

 そこで、どのような言葉があるのか国語辞典を引いてみました。

「【右傾】思想が保守的、国粋主義的になること」

「【保守】旧来のあり方や伝統を尊重すること」

「【ナショナリズム】国家主義。国粋主義」

「【国家主義】国家の存在を至上のものと考え、国家を個人に優先させようとする思想。個人の自由も利益も国家の隆盛発展によってのみ可能であるとする」

「【国粋主義】自国のよいところを認め、外来の思想や文化に影響されまいとする考え方。《参考》多くは自国が他国より優れていると考え、他を排斥しようする保守的な態度をいう」