最近のテレビのリモコンには「巻き戻し」ではなく、「早戻し」と表記されているものが増えているそうです。
インターネットの記事で読みました。あまり詳しいことはわかりませんが、親戚の子供から「巻き戻しってなに?」と訊かれたので、テレビのリモコンを見せたところ、そこに「巻き戻し」の言葉はなく「早戻し」と記されていたそうです。
この記事には子供の年齢は書かれていません。
その子は「巻き戻し」という言葉の意味が全く分からなかったのかもしれません。
そうではなく「巻き戻す」という言葉の意味は“巻いて戻すこと”だとわかっていて、それだけに録画した映像を前に戻すことを「巻き戻し」と表現されたことに違和感をもったのかもしれません。
後者である可能性が高いような気がします。
また、その子が日常的に使っているテレビのリモコンに「巻き戻し」という表記はないのだろうと思います。
だから、大人が「巻き戻し」と言ったので疑問に感じたのではないかと思います。
訊かれた大人は、「巻き戻し」と書かれているのが当たり前だという観念があるため、意識してリモコンを見たことなどなかったのだと思います。
それが幼い子供に尋ねられたことで、意識してリモコンをみると、そこに「巻き戻し」の表記がなかったため驚き、時代の流れや世代差を感じたのではないかと思います。
ちなみに僕自身は今でもVHSビデオデッキを愛用しています。
何回も書いていますが、販売用VHSビデオの映画や、テレビ番組を録画したVHSビデを時々見ています。
地上波がデジタル放送に完全移行する数か月前には、地デジチューナーを購入していて、それには録画機能もあるのですが、あえてVHSビデオで映画を録画していました。
地デジ放送が終わったあとも、VHSビデオデッキを使い続けようと決めていたからです。
それならば、アナログで放送されているうちに、できるだけ多く録画しておいたほうが、後々見るものが多くなると考えたのです。
そしてアナログ放送が終了する瞬間も、VHSビデオで録画しておきました。
その愛用しているVHSビデオデッキのリモコンには、「巻き戻し」と「早送り」の表記があります。
VHSビデオで映像を前に戻すには、文字どおりテープを“巻いて戻す”のですから「巻き戻し」という表記に違和感はないような気がします。
次に、僕が使っている地デジチューナーのリモコンを見てみました。
ちなみに僕はブラウン管テレビに、地デジチューナーを繋いでテレビを見ています。
その地デジチューナーのリモコンを見ると「巻き戻し」と「早送り」と表記されています。
当然ですが、テープで録画しているわけではありません。つまり録画した映像を前に戻すときは、なにかを“巻く”わけではないのです。
でも「巻き戻し」と記されています。
この地デジチューナーは、完全移行する少し前に買ったものです。たぶん2011年の春ごろだったと思います。
実際にテープを巻いて戻すのではないが、録画した映像を前に戻す操作を「巻き戻し」という言葉で表すことが定着していると、メーカーが判断したのかもしれません。
もしかしたら、そのリモコンをみた子供が「どうして巻き戻しなの? 何も巻いてないじゃん」というかもしれません。
上に書いたインターネットの記事の子供は、それまで「巻き戻し」と表記されたリモコンを見たことがなかったために、「巻き戻しってなに? 早戻しって書いてあるじゃん」と言いたかったのかもしれません。
実は僕も子供ころ「巻き戻し」という表記に疑問をもったことがあります。
我が家に初めてラジカセットが来たのは、僕が小学生低学年のころだったと思います。
そのラジカセに記されていた「巻き戻し」と「早送り」をみて、不思議だと感じたものです。
『どうして前に戻すのは「巻き戻し」なのに、先に進めるのは「早送り」なのだろう』
カセットテープは前に戻すのも先に進めるのも、“巻く”ものだと思います。
それなのに戻すときだけ「巻き戻し」で、先に進めるときは「巻き進め」とか「巻き送り」ではないのだろうと不思議でした。
また「早送り」のボタンを押すと、テープは早く進みます。「巻き戻し」ボタンを押してもテープは早く戻ります。
それなのに、どうして「早戻し」と「早送り」ではないのだろうと疑問でした。
しかし疑問に感じながらも追求することなく、いつの間にか疑問に思ったこと自体忘れていました。
最近のテレビのリモコンには「早戻し」と「早送り」とされているようですので、僕が子供のころ感じた疑問は生じないと思います。
僕の地デジチューナーのリモコンに表示されている「巻き戻し」は、概念的呼称といえるかもしれません。
最近のテレビのリモコンに表示された「早戻し」は、実態的呼称といえるかもしれません。
これからは後者が増えていくような気がします。
情報が飛び交う社会は、そういう方向に向かいやすいような気がするのです。